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【質問】 降圧剤服用中だが体調悪い

 77歳の女性です。高血圧のため、数年前から降圧剤を服用しています。朝と夕、寝る前の3回、一錠ずつ飲んでいます。寝る前は、朝と夕とは別種類です。時々、最高血圧が186、最低血圧が105まで上がります。横になっていると下がっていましたが、ここ数日、最高血圧は140くらいまでですが、最低血圧が95~110にもなります。最高血圧と最低血圧の差が、10~15しか開いていないときもあります。また、左足の甲がはれ気味で、右股(こ)関節部と右膝内部の痛みがあり、体温は36.5~37度になります。頭には何か詰まっているように重く、目もぼんやりしています。どのように気を付ければいいのか、教えてください。



【答え】 高齢者高血圧 -運動など生活習慣改善を-

斎藤内科循環器 斎藤 雅彦(徳島市城南町1丁目)

 一般に最高血圧が140以上で、最低血圧が90以上を高血圧と言います。高齢者は、血圧を下げ過ぎて心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞を誘発しないように、年齢別に降圧目標値が定められています。70代では、降圧目標値は最高が150~160以下、最低が90未満です。

 さらに心疾患、腎疾患、糖尿病が合併している高血圧についても、各疾患ごとに降圧目標値が定められています。そこで個々に応じた降圧目標値を定め、最も適した降圧剤を投与します。以下、質問に順次お答えします。

 降圧剤の服用方法は、効果が長く持続する薬を1日1~2回服用するのが普通です。質問の女性は寝る前にも薬を飲んでいるようですが、恐らく早朝の血圧上昇に対し、服用方法を工夫したものと思われます。

 急な血圧上昇はいろいろな環境要因によって起こります。普通は、安静にするだけで血圧が下がりますが、慌てて降圧剤を服用するとかえって血圧が下がり過ぎ、脳や心臓の合併症を起こす恐れがあります。

 質問の女性は、最高血圧の140は治療目標値に達していますが、最低血圧の95~110は高いため、少量の降圧剤を徐々に増量して90未満にする必要があります。上がったり下がったりする血圧の変動幅を減らすには、まず生活習慣を改善することです。生活習慣の改善を図り、血圧を2~3カ月かけてゆっくりと目標値まで下げることは、困難なことではありません。

 最高血圧と最低血圧の差を「脈圧」と言います。一般に高齢者高血圧の場合は最高血圧が上昇して、脈圧が増大します。質問の女性は血圧が上昇したときも、脈圧は81に増大しています。仮に、血圧を極端に下げた場合、脈圧は10~15と著明に低下しますが、この場合はショック症状を訴えます。質問にはショック症状の記載がなく、血圧測定の誤りも考えられます。血圧計を病院へ持っていき、血圧が正しく測定されているかチェックしてもらってください。また、家庭血圧の記録を参考にして、かかりつけの医師と二人三脚で血圧をコントロールすることも大切です。

 高血圧に合併する心疾患や腎疾患、薬の副作用では足の甲のはれは両側に出現するのが普通です。片側に出現する場合は、静脈環流異常が考えられます。甲のはれは下肢を挙げたり、立っている時間を短縮したり、歩行することで軽減します。

 右股関節部と右膝内部の痛みは関節そのものの疾患と思われますが、下肢に痛みを訴える高血圧の合併症として閉塞(へいそく)性動脈硬化症があります。これは動脈硬化が原因です。下肢の動脈腔が詰まって、その結果、筋肉の酸素不足のために筋肉痛を訴えます。下肢が冷え、運動によって痛みが起こり、休息によって消失するのが特徴です。下肢の動脈を触知することで診断は容易です。

 高血圧の自覚症状として頭重感、視力障害を訴えることもあります。薬を服用してこれらの症状が軽くなっているのであれば、薬を続けて服用してください。逆に薬を飲み始めてからこれらの症状が出現したのであれば、副作用の可能性があります。

 最後に生活習慣の改善について列記します。<1>肥満の予防<2>食塩の制限<3>アルコールの制限<4>有酸素運動(散歩など)<5>カリウムの摂取-です。高齢者の場合、個々に合った方法でゆっくり進めていくことが必要です。

徳島新聞2002年10月20日号より転載

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