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【質問】 帝王切開の傷痕がかゆい

 35歳の女性です。昨年2月、帝王切開で子どもを出産しました。その際、腹部に傷跡が14~15センチできました。真ん中は薄いのですが、上下5センチほどの傷跡は赤くケロイド状になっています。ずっとかゆくて、仕方ありません。傷の両横にかき傷が残るくらいかいてしまいます。このかゆみと傷跡は治るのでしょうか。毎日、悩んでいます。



【答え】 ケロイド -摘出と注射で治療可能-

助任診療所 坂東 俊介(徳島市助任本町3丁目)

 結論から話します。ケロイドは治療によって治すことができます。放置しても生命にかかわることはありませんが、年月がたてば大きくなり、醜状となり、その後も引きつり、痛み、かゆみが続き、悩まされることになります。

 まず最初に、治療を開始するまでの間、注意してもらいたいことがあります。強いかゆみがあり、つい手でかいてしまいますが、絶対に引っかいて周囲の皮膚に傷を付けないようにしましょう。傷が付くとケロイドは大きくなりますし、細菌の感染が生じやすくなり、状態を悪化させます。意志の強さが必要ですが、頑張ってください。

 この場合は、かゆみ止めの作用がある軟膏(なんこう)を何度も塗るのが良いでしょう。それでも止まらなかったら、氷でケロイドを冷やすと良い効果が得られます。ケロイドは体温が上がると増大し、痛み、かゆみもひどくなります。特に夏場は皮膚機能も活発で、汗もたくさん出るようになり、悪化する時期ですから、注意が必要です。風呂に長く入ると影響がありますので、シャワーで我慢しましょう。運動も体温が上がり、汗もかくためケロイドに張力が加わりますので控えてください。

 ケロイドがなぜできるかについては現在のところ、十分に分かっているとはいえません。ほとんどの人は手術をしても、傷をしてもケロイドはできません。このことから、体質による影響が一番大きいと考えられています。それでもケロイドのできた人たちには、共通したいくつかの要因があります。

 まず、部位によって差があります。首、胸、肩、下腹部、関節部はケロイドの好発部位です。特にしわに直角にできた傷は要注意です。傷の治りに時間がかかり、細菌感染のある場合、傷や縫合部に張力の加わるときにケロイドの原因になりやすくなります。逆に傷に圧迫が加わるとできにくくなります。背中のやけどはほとんどケロイド化しません。手術療法はこれらのことを考慮し、ケロイドが再発しにくいように行われています。

 治療はかゆみ、痛み、引きつれをなくし、外観を美しくする必要があります。このため、主にかゆみを少なくする抗アレルギー剤の服用、ヘパリンもしくはステロイド剤を含有した軟膏の塗布、ケロイド発生を予防する放射線療法は、適応が限られていますので一般的にはほとんど行われません。ケロイドが新しく、幅の狭いものはステロイド剤の局所注射が、効果を発揮します。炎症と増大が止まり、古くて大きいものには、手術療法が行われます。もしこの時、ケロイドができても、注射の効果の良い時期ですから、再発は防がれ安全です。

 相談の女性のように下腹部に縦にできたケロイドは、通常、将来の妊娠、帝王切開のことを考え、しわに合わせた痕(あと)に修正をすることを行いませんが、ケロイドの摘出と注射を組み合わせることで、ほとんど問題なく治療できると思われます。

徳島新聞2002年7月7日号より転載

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