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【質問】 抗体があるといわれ心配

 20代前半の女性です。性感染症について相談します。昨年の夏、不正出血と、右下腹部に仙(せん)痛があり産婦人科を受診しました。医師におりものが多いと指摘され、検査の結果、出血に問題はないが、クラミジアの抗体があるといわれました。しかしクラミジア菌が体に害を及ぼしておらず、治療は必要ないとのことでした。そうはいっても本などには不妊の原因になると書いてあり心配です。高校時代、避妊具を着けてもらえないまま性交渉を持った経験があり、その後、黄色い悪臭のするおりものが出ましたが、受診したら異常なく、念のためにと、クロマイ膣(ちつ)錠という薬をいただきました。当時の症状がクラミジア抗体の原因なのでしょうか。現在、結婚を考えている男性がいますが、不妊のことが気がかりで踏み切れません。クラミジア抗体が不妊の原因になるのでしょうか。治療を受けなくても大丈夫でしょうか。



【答え】 クラミジア感染症 -不妊原因だが治療は可能-

河野美香レディースクリニック 院長 河野 美香(徳島市山城西3丁目)

 お話を少しまとめてみましょう。出血と下腹部痛で産婦人科を受診。医師におりものが多いと指摘され、クラミジアの検査をしたところ、抗体は検出されたものの治療の必要はなかった。さらにあなたの心配事は<1>クラミジア感染症が不妊の原因になるかどうか<2>高校時代の黄色い悪臭のあるおりものは、クラミジア感染のためだったかどうか<3>今、治療を受けなくても大丈夫かということですね。

 前半のあなたのお話に関しては、詳細が十分わからないので私としてのコメントは差し控えさせてください。そこで、後半の懸念事項について解説してみましょう。

 <1>については「なります」。クラミジア、正確にはクラミジア・トラコマティスに感染すると、特別な症状のないままに、膣から子宮内へ、さらに卵管を通って腹腔(ふっくう)内へと炎症が広がっていくことが分かっています。

 具体的には、クラミジア頚管(けいかん)(子宮の入り口)感染を治療しないと、その8~30%が骨盤内の炎症を起こし、そのうちの17%が不妊や慢性の骨盤痛を訴えるようになります。妊娠した場合にもその10%が子宮外妊娠になるといわれています。

 <2>に関しては、クラミジア感染以外のものではないでしょうか。女性の場合、クラミジアに感染しても5人に1人しか症状が出ないといわれています。たとえ症状が出ても、わずかにおりものがあったり、不正子宮出血や下腹部痛が起こったりする程度で、医師でも気をつけないと見落とすことがほとんどです。

 クロマイ膣錠でよくなっているようなので、恐らく細菌性膣症であったのではないでしょうか。細菌性膣症はごく身近にいる複数の細菌が、膣内で繁殖する病気です。症状は悪臭のあるサラっとしたおりものが増えます。

 <3>の治療に関してですが、クラミジアの感染をチェックするには、おりものから菌の存在を検査する方法と、菌に対する抗体を血液検査で調べる方法があります。おなかの中に炎症が及んでしまったものは、菌を直接検査するのは困難なので、抗体検査をすることになります。

 しかし残念ながら抗体価の高低で感染が持続しているかどうか、病状がどこまで進んでいるかなどを正確に診断することはできません。でも一応、抗体価が高ければ治療を、低い場合には症状や病歴を聞いて治療するかどうかを決めているのが現状です。

 あなたには結婚を考えている男性がいるそうですね。クラミジア感染による不妊が気になって結婚に踏み切れないということですが、まだ不妊症になっているかどうかは分かりません。一度、病院で受診し、卵管が詰まっているかどうか調べてみたらどうでしょう。悩んでいるだけでは先に進みません。もし最悪な状況になっていたとしても、あなたの心配以上に医学は進んでいます。治療はきっとできると思いますよ。

徳島新聞2002年2月3日号より転載

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