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【質問】 手の指紋なくなりさらさらに

 50代の主婦です。1~2年前から手の指先(指紋があるところ)がさらさらになり、すべってページがめくれなかったり、紙幣が数えられなかったりして困っています。これは老化現象なのでしょうか。病院へ行った方がいいのでしょうか。



【答え】 主婦手湿疹 -皮脂膜を保温剤で補う-

宇都宮皮膚科泌尿器科 副院長 宇都宮 正裕(徳島市吉野本町1丁目)

 ご質問から、主婦手湿疹の症状かと思われます。手湿疹にはかゆみや赤みを伴うアレルギー性のものと、かゆみはなく、皮膚が乾燥し、ひび割れなどが主体の非アレルギー性のものがあります。実際は両者の混合型も多いのですが、あなたの場合は後者と思います。老化現象ではありません。

 非アレルギー性の手湿疹は、慢性の刺激によって起こります。種々の環境因子、化学物質ではせっけん、シャンプー、洗剤などに含まれる界面活性剤やアルコール、シンナーなどの有機溶媒との接触が最大の原因となります。また衣服の繊維、段ボール、お札、パソコンのキーなどに何度も触れる(職業などで)ことも原因となります。

 手は日常、いろいろな刺激物質に触れていますが、健康な皮膚は外からの刺激に対してある程度の防御機能(バリアー)を持っています。皮脂膜(皮膚の脂)と、皮膚の最も外側にあるある角質層がその役割を果たしています。

 せっけんやシャンプー、洗剤の使用や、繊維、紙に度々触れると、皮脂膜が奪い取られます。主に皮脂膜を作る皮脂腺(せん)は毛穴にありますが、毛のない手のひらは皮脂腺がありません。このため手のひらは角質の細胞自身が作る皮脂膜だけに依存しているので、一度奪われると再生するのにおよそ六時間要します。

 皮脂膜の破壊は角質層の障害につながり、角質層は水分を大気中に奪われてカサカサになり、ひび割れを生じます。あるいは、ご質問のように指の指紋がなくなり、さらさらになることもあります。特に湿度が低い冬は症状が悪化しやすいのです。

 さて、予防と治療ですが、いかにそういった刺激を避けるかが重要になります。しかし職場転換などは難しいでしょうから、常に奪われた皮脂膜をハンドクリームなどの保湿剤で補ってやることが大事です。また、水仕事のときは洗剤に直接触れないように、木綿の手袋を着けた上に、ビニールの手袋をしましょう。ゴムの手袋はかぶれる人がいるので注意してください。

 柄つきのスポンジを使って洗うのも一つの方法です。かゆみや赤みの強い場合は、副腎(じん)皮質ホルモン軟膏(なんこう)が炎症を抑えます。この軟膏は適切に使えば非常に効果があり、まったく安全な薬です。

 いずれにしても一度皮膚専門医の診察を受け、適切な予防と治療をすることが大事だと思います。

徳島新聞2001年12月23日号より転載

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