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【質問】 腰痛に悩む高一の息子

 60代後半の女性です。今年1月に2回ほど1日中ご飯が食べられない日があり、その後もそれまではなかったきつい胸やけに加え胸から胃の辺りがもやもやするので受診しました。5月の連休に胃カメラ検査を行ったところ、食道にアセモのような赤いブツブツと白いモノがびっしりできており、良性の食道炎との診断でした。1カ月服薬し、白いモノは消えましたが、赤いブツブツは変わらず、胃の方にもできていました。お薬をいただいているのですが、最近あまり食べられず、すっきりしません。体重も減っています。治す方法はないのでしょうか。



【答え】 逆流性食道炎 -脂もの控え腹八分目に-

徳島県立中央病院 消化器科 青木 秀俊

 きつい胸やけがあり食道炎と診断されたとのことですので、まず食道炎(逆流性食道炎)についてお話しします。

 芋類などの甘いものや脂っこいものを食べ過ぎた後、特に食後二時間以内や就寝後に、胃から胸にかけて焼けるような不快感(胸やけ)を感じることがありませんか? このような症状のある方は、逆流性食道炎の可能性があります。

 逆流性食道炎は、もともと欧米人に多い病気とされてきましたが、最近わが国でも増えており、軽症の方を含めると3~4人に1人が患っているとの報告があります。

 食道と胃のつなぎ目部分は、正常ならぎゅっと締まって胃の内容物が食道に逆流しないように「弁」のような働きをしています(図左)。この弁が加齢や食べ物の影響で緩んで働きが悪くなったり、肥満や腰が曲がったために前かがみになったりして腹圧が上昇すると、胃液(胃酸)が食道に逆流します。

 加齢による弁の緩みには、大部分が食道裂孔ヘルニアという状態が関連しています。これは、本来おなかの中にあるはずの胃が、一部胸腔内に移動した状態(図右)で、中年以降の女性に多いようです。食道粘膜は胃と違って酸に弱く、逆流した酸によって粘膜が傷害(びらんや潰瘍(かいよう))された状態が逆流性食道炎です。

 胸やけ、げっぷ、酸っぱい液がのどの方に上がってくる、胸痛などの症状が生じ、ひどくなると貧血になったり食道狭窄(きょうさく)で食事がとれなくなったりすることもあります。また明らかに食道炎の症状があっても、内視鏡では異常を認めないこともあります。こんな場合も心臓などの病気がないとわかったら、食道炎の薬が効く場合は食道炎として治療します。逆に内視鏡でひどい粘膜傷害があっても、無症状のことがあります。

 治療は、胃酸の分泌を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害剤)といわれる薬が最も有効です。これに胃酸を中和させたり、胃腸の動きをよくして胃の内容物をスムーズに小腸に送りだす薬などを組み合わせると、大部分の方は軽快します。以前は保険で八週間までしかPPIの投薬は認めらず、PPIをやめると胸やけが再発することがしばしばありました。最近では症状が再発する方に対しては8週間以上の投与も認められるようになっています。

 さて、あなたの場合ですが、実際の内視鏡写真がなく、体格や食生活などが不明なため、十分にお答えできないかもしれませんが、その場合はお許しください。内視鏡の診断で見つかった白いものとは、恐らく食道炎に伴った白苔(はくたい)でないかと思われ、PPIを服用し軽快したのだろうと考えられます。しかし、赤いぶつぶつは変わらず症状はすっきりしないことから、薬はある程度効いているようですが、不十分なようです。

 このような場合の日常生活の注意点として、脂っこいものや甘いもの、アルコール、刺激物を控え、食事は腹八分目にしましょう。このほか肥満の方は減量に努め、食後はすぐ横にならない、前かがみの姿勢を避け、就寝時には上半身を高くする、腹部を圧迫しない、などが挙げられます。

 内視鏡で食道炎の所見があり、PPIの内服にもかかわらず胸痛などが持続する場合は、心血管系の疾患がないか確かめるため専門医の受診をお勧めします。また食道炎による炎症の持続は、まれに食道腺癌(せんがん)の原因になることや、真菌などによる特殊な食道炎を合併することもあり、定期的な内視鏡検査が必要と思われます。

徳島新聞2001年12月16日号より転載

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