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県民の皆さまへ

【質問】 竹やぶに入り発疹と高熱

 竹やぶへ入ったあと、体への発疹(ほっしん)と同時に高熱が出たので医者に診てもらったところ、日本紅斑(こうはん)熱といわれました。よく似た症状のつつが虫病は聞いたことがありますが、日本紅斑熱はどういう病気で、徳島に多いのでしょうか。



【答え】 日本紅斑熱 -早急にダニ退治を

馬原医院 院長 馬原 文彦(阿南市新野町信里)

 日本紅斑熱は、1984(昭和59)年に阿南市で発見され、その後、南は鹿児島県から北は千葉県まで、主に西日本各地で発生していることが分かりました。古来、1日が無事に過ぎることを「つつがなく」といいましたが、これは農家の人々が「つつが虫病」という病気にかかって重い患いをしたことに由来します。

 つつが虫病は、通常の細菌より小さく、ウイルスより大きい、リケッチアという微生物による感染症です。日本紅斑熱も、このリケッチアに属する新しい病原体によるものだと分かり、リケッチア・ヤポニカと命名されました。どうやら、つつが虫病と日本紅斑熱の症状が似ているので、発見が遅れたようです。

 それでは日本紅斑熱とはどのような病気でしょうか。まず、この病気は病原体を持ったマダニ類に刺されることにより人に感染します。リケッチアとマダニが山の中で仲良く共生している所へ人が入ることにより、偶発的に感染するのです。


皮膚を刺し、日本紅斑熱を媒介するマダニ
 県内では、春の山菜採りや竹やぶでのタケノコ掘り、秋のクリ拾いやキノコ採りで感染する例が多く、春と秋に多く発生しています。

 マダニに刺されてから2~8日の潜伏期間を経て発病し、急激に38度以上の高熱(時に40度を超える)が出ます。それと同時に全身に紅斑(紅色の斑点)が出現します。この紅斑は、はしかのように「かゆくない」のが特徴です。注意深く観察するとマダニによる刺し口を見つけることができます。これらの症状(高熱、紅斑、刺し口の三兆候)があれば病院で診てもらいましょう。この際、野山に入ってマダニとの接触の機会があったことを必ず医師に伝えましょう。

 明石海峡大橋が開通してすぐのことでした。神戸市在住の男性が、橋を渡って県南部の親類宅に遊びに来ました。神戸に帰ってから高熱になり、1~2週間の間にどんどん容体が悪くなり、ICU(集中治療室)で治療を受けたものの、意識障害、呼吸不全に陥りました。

 病院へ駆けつけた人の中に徳島の親類もいて、「ダニに刺された病気ではないか」と申し出たのが幸いしました。すぐに主治医から緊急電話が私のところに入り、危機一髪、この患者さんは事なきを得ました。親類の、この一言により救命されたのです。

 治療についてですが、現在一般に使われている抗生物質のほとんどは効きません。しかし、テトラサイクリンという特効薬がありますのでご安心ください。すなわち早期診断と適切な治療により確実に治せる病気なのです。最近、受診の遅れによる日本紅斑熱の死亡例が確認されたことはまことに残念です。

 予防法ですが、マダニを駆除することは不可能です。従って、「野山に入るときはダニさんも忘れずに」です。帰ったら体中を点検し、マダニを見つけたら自分で取らずに病院で確実に取ってもらいましょう。また、予防的に衣服にダニスプレーをするのも有効です。

徳島新聞2001年9月23日号より転載

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