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【質問】 腰痛で不快 歩行も困難

 事務職を退職した63歳の男性です。昨年末ごろから畑仕事をすると腰痛が起こり、朝起きても痛みが治まりません。起立していると左股(こ)関節から左ひざの裏側にかけてしびれがあり、脱力感を伴い不快で歩行するのも困難です。畑仕事を休んでも最近では痛みが治まりません。いすに腰を掛けているのが一番楽です。手術する必要があるのでしょうか。良くなる方法、体操などがありましたら教えてください。



【答え】 腰部脊柱管狭窄症 -日常生活の注意で改善を-

岡田整形外科 院長 岡田 勝良(鳴門市大津町吉永)

 腰部脊柱管狭窄症の神経根(こん)型が考えられます。50-60歳のころから発生しやすくなります。

 これは、背骨(脊柱)のすぐ後ろを通っている脊柱管が、背骨や軟骨、靭帯(じんたい)などの変形によって狭くなり、管の中の脊髄や神経の根元が圧迫、刺激されて痛みを起こす病気です。

 起立歩行をしていると、片方あるいは両脚のしびれや疼痛(とうつう)が増して歩けなくなりますが、しばらく立ち止まり、腰をかがめたり、腰を掛けたりすることで、再び歩けるようになります。この特徴的な症状を間欠跛行(はこう)といっています。

 症状が進むにつれて歩ける距離が短くなります。歩行可能な距離が50メートル以下の場合は、重症と考えてよいでしょう。

 エックス線で、背骨の変形や、背骨を作っている個々の椎体(ついたい)、椎弓(ついきゅう)、椎間関節の肥大や、背骨がずれたり、曲がったりしているのが確認できることがあります。脊髄造影やCT、MRIなどでも同様に診断できます。

 手術が必要だと考えられる症例でも、日常生活の姿勢を注意させる簡単な保存療法を行うことで改善がみられ、その後再発を起こさないこともあります。このため、腰部脊柱管狭窄症の診断がつけられても、手術の対象になるケースは少ないと思われます。

 以下、治療法を述べます。

 《薬物療法》腰椎部分の脊柱管内には馬尾(ばび)と呼ばれる神経が通っています。この神経の血流障害が、間欠跛行を誘発すると考えられているため、馬尾神経組織の血流を改善させる薬剤を投与します。

 《注射療法》副腎(じん)皮質ホルモンや局所麻酔剤の脊髄硬膜(こうまく)外注入を行って痛みを取り除きます。

 《理学療法》ホットパックなどの温熱療法や渦流浴などの水治療、超短波などによる治療、マッサージなどにより痛みを和らげます。

 《けん引療法》骨盤をけん引することで痛みを軽減します。

 《装具療法》ウィリアムズの装具といって、前かがみ状態を保つ装具があります。腰部脊柱管狭窄症による間欠跛行時の休息姿勢が「しゃがむ」「腰掛ける」といった腰椎の前弯(腰椎がへその側にくの字に湾曲している状態)を減少させる姿勢であることから、このような症例にこの装具を用いるとよい効果があります。

 《体操療法》腰痛体操があります。これは腰椎の前弯を減少させ、背筋の伸展と腹筋、背筋、腰仙(ようせん)筋の筋力増強を目的としています。

 《手術療法》硬膜や神経根の圧迫を除き、腰椎を固定させる目的で行われます。筋力低下などの麻痺(まひ)症状の改善が2~3カ月たってもみられない場合には、手術を行う必要があります。

 整形外科を受診して、確定診断が出た後で、治療法について相談されるのが一番だと思います。

徳島新聞2001年5月20日号より転載

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