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【質問】 追突され後遺症が心配

 車を運転中に追突され、病院でむち打ち症と診断されました。エックス線検査とのみ薬、湿布薬をもらいました。むち打ちは後遺症が出ることもあるとききましたが、心配ないでしょうか。今後、どういった症状がでたら注意しないといけないのでしょうか。



【答え】 むち打ち症 -不安を持ち続けない-

平野整形外科 院長 平野 直彦(美馬郡穴吹町穴吹)

 むち打ち症による後遺症を心配されているようですが、一般的なむち打ち症の病態、症状、経過、治療などについて説明します。

図1 追突された場合
頭部に静止の慣性が働くことで、頚部は過伸展し、その反動で屈曲する。

図2 正面衝突や急停車の場合
頭部に運動の慣性が働くことで、頚部は過屈曲し、その反動で伸展する。

 むち打ち症は、むち打ち損傷、頚部(けいぶ)ねんざ、頚椎(けいつい)ねんざなどとも呼ばれます。近年、自動車の著しい増加で交通事故が多発し、むち打ち症という言葉が有名になりました。むち打ちとは、サーカスの動物使いが革のむちを空中で振ったときのような状態が、頚部に起きることから命名されたものです。

 自動車に乗っていて追突されたときは<図1>、正面衝突や急停車などのときは<図2>のようなむち打ち状態になります。

 頚部には首を安定させ、運動性を良くするための靭帯(じんたい)、筋肉、関節および椎間板(ついかんばん)などがあります。これらがむち打ち状態になったときに損傷を受けることがあります。まれですが神経、骨までも損傷を伴います。

 不意に事故に遭う場合と、予測していて遭う場合では、不意打ちの方がむち打ち状態は強くなります。しかし、必ずしも症状の強弱に影響を与えるとは限りません。年齢や体質なども関係してきます。

 受傷直後は、精神的な緊張を伴うためか症状がない場合もありますが、2~3日後までに頚部の運動痛、運動障害、後部頭痛、肩より肩甲部の緊張感、上肢のしびれ感、吐き気、目の痛み、疲れ目、めまい感、耳鳴り、頭が重い感じなどの多彩な症状がしばしば出てきます。

 また1~2週間後から1~2カ月ごろに肩凝り、頭痛、視力障害、耳鳴り、めまいなどを頑固に訴えることがあります。なぜこのような症状が出るのかよく分かっていませんが、頚部の交感神経の刺激症状と考えられています。

 診断はこれらの症状の有無、レントゲン検査、神経学的検査を行い確定します。

 経過は症状の強弱によっても変わりますが、軽いものは2~3日、ほとんどの場合は1~3週間ほど安静にして治療することで症状は改善します。しかし中には1カ月から数カ月かかることもあります。

 治療は初期の安静が基本です。そのほか薬物治療があり、軽減しないときは理学療法なども必要になります。どうしても症状の改善がみられない場合は、筋力テスト、筋電図、神経伝達速度測定、MRIなどの検査を行い、原因を突き止めます。

 最近の車は、事故の衝撃を和らげるため、衝撃吸収機構が取り入れられ、ヘッドレストやエアバッグ、シートベルトなども普及しています。このため、むち打ち損傷の程度は軽くなってきています。

 むち打ちに遭った方の中には、交通事故という精神的ショックを受けたり、将来に対する不安を抱いたり、誤った思い込みを持ったりする方がみられます。特に不安は症状の改善に悪影響を及ぼします。事故当初から医師による十分な説明を受け、病態を知り納得して治療に臨むことが大事です。いたずらに不安を持ち続けないことが、後遺症の発現防止につながると考えられます。

徳島新聞2001年3月25日号より転載

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