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【質問】 就寝中、切断しそうな足の痛み

 58歳の男性です。足のけいれんでお尋ねします。就寝中やあぐらをかいているとき、急に半膜様筋(大たい部内側)と、腓腹(ひふく)筋が硬直し、今にも切断しそうな痛みで息が止まりそうになります。マッサージをしても、足の位置を変えてもすぐには治りません。1~2分で治まりますが、すぐ再発することもあります。ビールが好きで痛風ですが、関係あるのでしょうか。よい治療法を教えてください。



【答え】 こむら返り -基礎疾患調べ漢方療法を-

和田整形外科 院長 和田 昇(美馬郡脇町拝原)

 お尋ねの症状は、広い意味でのこむら返りと思われます。こむら返りとは「骨格筋の不随意的で疼痛(とうつう)を伴う急激なけいれん」を意味し、どの筋にも発症します。特に腓腹筋(こむら)に生じることが多いため、このように呼ばれています。

 原因は分かっていません。筋を動かす(収縮)ためには、2つの方法があります。1つは意識的(随意的)に筋を動かす場合です。つまり大脳皮質の運動領野から命令が出て、せき髄の運動神経細胞を介して電気的信号が筋に伝えられて収縮します。もう1つは、周りの環境の変化によって知覚神経が刺激され、その信号がせき髄の運動神経細胞に入力されて、反射的(不随意的)に収縮する場合です。

 このせき髄反射の強さや反応の仕方は中枢神経系の調節を受けています。この「調節」に、いまだ不明な点が多いわけです。こむら返りは、こうした収縮を調節する機能に何らかの障害が起きるためと考えられています。

 お尋ねの痛風(高尿酸血症)の影響も多分にあると推測されます。といいますのは、こむら返りを起こしやすい病気は、さまざまで単一でないからです。水や電解質の代謝異常(下痢、おう吐、脱水、低ナトリウム血症、低カルシウム血症など)、整形外科疾患(坐(ざ)骨神経痛、せきつい管狭窄(きょうさく)症など)、肝硬変、糖尿病などの代謝性疾患、脳血管障害などといろいろあります。また、こむら返りは高齢者や妊婦にも多くみられます。

 痛風も高尿酸血症をきたす代謝性疾患ですが、この病気だけ現れるのはまれで、肥満、脂肪肝、高脂血症、腎結石などの生活習慣病を伴う場合が多いからです。

 こむら返りの治療には、基礎疾患の有無を確かめながら治療する必要がありますが、激しい痛みを伴った筋のれん縮に対しては漢方薬がよく使われます。中でも芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、この症状に特別よく効く漢方薬として昔からよく知られています。

 一般に漢方薬は全身の状態(証)をみて使い分けますが、芍薬甘草湯はその必要がなく、平滑筋、骨格筋の区別なく急激に起きる筋のけいれんに効果があるとされています。しかも、他の漢方薬に比べて速効性があるので、西洋薬的な感覚で使え、とんぷくとしても服用できます。

 こむら返りは夜間や早朝に起きやすく、疲労や冷え、脱水症状に誘発されやすいなどの特徴がありますので、これに合わせて服用することができる非常に便利な薬といえます。芍薬のペオニフロリンと甘草のグリチロリチンなどの成分に炎症を抑える作用があり、2つの相乗効果で鎮痛、けいれんを抑える作用を発揮すると考えられています。

 しかし、この漢方薬を長期またはみだりに使うと、低カリウム血症、高血圧、浮腫(ふしゅ)などを起こし、偽アルドステロン症やミオパチーなどの副作用もありますので注意が必要です。漢方薬としてはほかに、八味地黄丸(はちみじおうがん)、柴苓湯(さいれいとう)などがあり、西洋薬は各種の筋弛緩(しかん)剤、鎮痛消炎剤、ビタミン剤などがよく使われます。

 こむら返りを起こす背景には代謝異常、神経障害、抹消循環障害などの基礎疾患が存在している場合があります。対症療法にとどまらず、基礎疾患を調べながら治療する必要がありますので、専門医の受診をお勧めします。

徳島新聞2001年1月28日号より転載

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