徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 あごの関節がガクガク

 49歳の男性です。口を開けるとき、あごの関節がガクガクする状態が、2年ほど前から続いています。1週間前からはそのうえに痛みも感じるようになりました。何科を受診すればいいのでしょうか。また、どんな治療をするのか教えてください。



【答え】 顎関節症 -専門的な診断受けて-

徳島大学歯学部 歯科補綴学第二講座助教授 中野 雅徳

 あなたの症状から判断して、顎関節症(がくかんせつしょう)の可能性が高いと思います。

 顎関節症は、あごの関節や咀嚼筋(そしゃくきん)の痛み、開口動作などに伴って、あごの関節ががくがく、あるいはカクンと音がする、口が開きにくいなどを主症状とし、虫歯や歯周病に次ぐ第3の歯科疾患といわれています。

 あごの関節は耳の少し前のところにあり、〈図〉のように側頭骨という頭の骨にあるくぼみと、下あごの骨の後ろ上方端にある下顎頭(かがくとう)とで関節を形成しています。また、下顎頭にはクッションのような働きをする関節円板が帽子のように覆っており、下顎頭のスムーズな動きを助けています。

 耳の少し前の部分を指で軽く触って口を開け閉めすると、この下顎頭の動きがよく分かります。あごの関節に異常がない場合、口を開けると左右の下顎頭は側頭骨のくぼみから同じ速さでスムーズに前方に出てきます。

 しかし、関節円板が何かの原因でずれると、ずれた関節円板が引っ掛かって下顎頭の動きが悪くなったり、関節円板がずれた状態から本来の位置に戻る瞬間にカクンという音が発生したりします。

 関節円板にずれが生じるのは、あごの関節に過剰な負荷が掛かるからです。原因としては打撲などによる直接的な負荷のほかに、睡眠中の歯ぎしりや日中の無意識のかみしめ癖などがあります。また、かみ合わせに異常があって、このような習癖が続くと関節にかかる負担はさらに大きくなります。このほかにほおづえやうつぶせ寝、あるいは関節の状態を気にしてあごを左右に振る動作なども負担原因となります。

 音がするだけで、日常生活に全く支障がないという人は、かなりの割合でいます。しかし、関節にかかる負担がさらに大きくなって、ずれや引っ掛かりが大きくなったり、関節の内部組織などに外傷性の変化が生じたりすると痛みを伴うようになり、口が開きにくい症状が出てきます。

 顎関節症は、かみ合わせの異常と関係する場合もありますので、歯科を受診するのがよいと思います。また、大学病院などでは専門に治療を行っている歯科医がおります。治療法は、患者さんの状態や症状を悪化させている原因によって異なりますので、一律にはいえませんが、先に挙げた原因となる動作があれば、これをやめ、安静を保つことを患者さんご自身にやっていただきます。

 睡眠中の歯ぎしりが悪化原因となっている場合には、スプリントというマウスピースのようなプラスチックの装置を入れてかみ合わせを変え、関節に掛かる負担を減らすようにします。

 必要な場合には患者さんのかみ合わせそのものを治します。痛みの状態によっては消炎鎮痛剤を服用したり、湿布薬を張ったりすることもあります。また、内視鏡を使った手術なども治療法としてありますが、手術が必要な例は非常に少ないといえます。

 あなたの場合も、痛みがなくならないのなら早めに専門的な診断を受けた方がよいと思います。

徳島新聞2000年12月3日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.