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【質問】 せきが止まらない

 78歳の女性です。7年前、脳血栓で右手が麻痺(まひ)し、その3カ月後に肺がんで左下葉を切除しました。退院後から時折せきが出ていましたが、3年ほど前からだんだんせき込むことが多くなり、苦しんでいます。内科の先生は「肺の手術のためで、ぜん息ではない」と言います。1年中、夜昼なく発作を起こし、呼吸が苦しい上に動悸(どうき)も激しく、とてもつらい思いをしています。吸う息が弱く、深呼吸も思うようにできません。症状を和らげるよい方法はないでしょうか。現在、骨粗しょう症と糖尿病でも通院治療中です。



【答え】 せき込む病気 -原因を調べることが重要-

徳島県立中央病院 呼吸器科 坂東 弘康

 左肺の下葉切除手術をしてから少しせきが出ていたことに関しては、手術の影響があるのかもしれません。しかし、術後4年目ぐらいからせき込むことが多くなったのは、時間の経過から考えて、別の原因を考えた方がよさそうです。

 せき込む病気はいろいろありますが、比較的頻度の高いものから考えてみましょう。

 まず慢性気管支炎と肺気腫(きしゅ)です。これらはほとんどたばこが原因となっていますので、禁煙が必要です。たばこを吸わなくても、周囲の人の喫煙が影響してこの病気になることも、まれにあります。この病気の場合、せきとともにタンが出ることが多いのですが、あなたにその症状はありますか。

 肺機能検査や胸部レントゲン、CT検査で診断することができ、抗コリン剤の定期的な吸入、気管支拡張剤で症状が緩和されます。

 気管支ぜんそくの場合は、一般には夜間、早朝に症状がよく出ます。呼吸時にヒューヒュー、ゼイゼイという音を伴うことが多いのですが、せきぜんそくといって、せきが主な症状の病気もあります。アストグラフという気管の過敏性を調べる検査や、気管支拡張剤、抗アレルギー剤、吸入ステロイド薬などの効果が認められることにより診断されます。

 血圧を下げる薬(アンギオテンシン転換酵素阻害剤)によって、せきが出る場合もあります。そのような薬を服用しているかどうか確認してみてください。

 7年前に脳梗塞(こうそく)にかかったとのことですが、物を食べるときにむせたりしませんか。飲み込むときに誤って気管に誤飲して、嚥下(えんげ)性肺炎を起こしている場合もあります。食事の後で特にせき込みやすい症状があればこの可能性が高く、胸部レントゲン、CT検査で診断することができます。この場合、飲み込みやすい食品を選んで、慌てずに時間をかけて良い姿勢で食事をする必要があります。

 歯の具合が悪い場合にも誤飲しやすくなるため、歯科で治療してもらわなければなりません。うがいや歯磨きで口の中を清潔にすることにより、症状を軽減することができます。感染症状がある場合は抗生剤が必要になります。

 慢性心不全でもせきが出る場合があります。体を動かすとひどくなり、夜も横になるよりは体を起こした方が楽に呼吸できるようになります。胸部レントゲン、CT検査や心臓エコー検査で診断することができます。心臓の治療により症状が緩和されます。

 肺線維症でもお尋ねの症状が認められます。呼吸音の聴診や胸部レントゲン、CT検査で診断することができます。酸素不足を伴う低酸素血症の場合は、在宅酸素療法が必要で、酸素を吸入することで症状が緩和されます。

 以上説明した病気以外でも、お尋ねの症状が出ている可能性があります。原因となっている病状によって治療法は異なってきます。かかりつけの先生と十分相談して、原因を正確に調べることが重要です。

徳島新聞2000年6月4日号より転載

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