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【質問】 生理が不順、耳や心臓にも異常

 51歳の女性です。昨年から生理が3カ月に1回と、飛び飛びになり今年から更年期の症状が出てきました。耳の中でトクトクと音がして聞こえにくくなり、耳の裏側の下部に痛みがあったり、重たい感じになったりします。同時に心臓もドキドキして息苦しくなります。耳鼻科では耳は悪くないといわれ、内科で自律神経失調症と診断されました。今年1月末からホルモン補充療法(HRT)を始めましたが、どんな療法なのでしょうか。ホルモン剤を飲み続けなければいけないのか、副作用はないのか、ホルモン剤だけで更年期障害が出なくなるのかなど教えてください。



【答え】 ホルモン補充療法 -有効性高く長期服用も可-

徳島県立中央病院 産婦人科部長 奈賀 脩

 「不定愁訴」という言葉があります。訴えがあるのに、専門医が詳しく検査しても、相当する所見が見つからない症状のことです。社会的、心理的ストレスによってもこの不定愁訴が現れることがあります。この場合、一般に自律神経失調症、心身症などの診断がつけられます。

 女性は閉経期を挟んで、個人差を含めると40-60歳の更年期に、卵巣機能が低下し、女性ホルモンの分泌が減少するという特徴的なホルモン環境の変化が起こります。

 さらに、この年代に特有の社会的、心理的ストレスが複雑に絡み合い、更年期女性の約8割が不定愁訴を経験します。これが「更年期障害」です。「顔がかっと熱くなる」「汗をかきやすい」「手足、腰の冷え」「息切れや動悸(どうき)」「不眠」などが代表的な症状です。

 あなたの症状に近いものとして「頭痛」「耳鳴り」がありますが、これも不定愁訴として多いものです。

 HRTとは、低下した女性ホルモンを補充する療法です。欧米では既に30年の歴史があり、普及率は更年期女性の30-40%にのぼっています。日本でも7~8年前から急上昇し、約30万人がHRTを受けていると推定されます。

 更年期にはいると、女性ホルモン(エストロゲン)の低下に伴って、骨量が急激に減少します。50歳以上の女性の4人に1人は「骨粗しょう症」にかかっているともいわれ、寝たきりの原因の一つである大腿(たい)骨頚(けい)部骨折が年間8万件以上に増えているとのことです。

 また、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患、脳梗塞といった脳血管障害など、動脈硬化性疾患の危険因子としての高脂血症も急増し、50歳以上の女性の半数が高脂血症にかかっているといわれています。

 HRTがこの骨粗しょう症や高脂血症の予防、治療に有効であることが、普及率のアップにつながっています。

 もちろん、更年期障害にも有効です。ただ「顔がかっと熱くなる」「汗をかきやすい」などにはよく効きますが、他の症状、特に一番苦しい「寝つきが悪い、眠りが浅い」という症状に対する効果は約50%とかなり低くなります。このため、漢方薬や抗うつ剤、睡眠鎮静剤などが併用されることがあります。

 副作用として、乳がんや子宮がんになるのでは、と気にされている方が多いと思われますが、HRTを行う際の併用薬である黄体ホルモンの作用により、HRTを受けていない女性と比べて、り患率に差はありません。しかし、この種のがんにかかっている方には禁じられています。

 長期投与に関しては、骨粗しょう症、高脂血症の予防、治療に年単位の服用を必要とすることから判断しても、服用を続けても心配ありません。耳の症状が少し残っているとのことですが「聞こえにくい」状態が続くようであれば、聴力検査を定期的に受けられてはいかがでしょうか。

徳島新聞2000年4月16日号より転載

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