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【質問】 緊張すると言葉が出ない孫

 高校生の孫のことで相談します。小学校高学年のころから吃(きつ)音になりました。周囲があまり気にし過ぎるとよくないと言うので、そのままにしておきました。しかし、いまだに緊張するとすぐには思った言葉が出ず、言いたいことの3分の1ほどしか、しゃべることができないようです。治してやりたいのですが、どんな治療法があるのでしょうか。また、受診する際は何科にかかればよいのでしょうか。



【答え】 吃音 -焦りを取るのが基本-

徳島大学医療短大 教授 二宮 恒夫

 吃音症になると、音声や単語の頻繁な繰り返しによって会話に流ちょうさがなくなるため、コミュニケーションに障害をきたすだけでなく、心理的な負担も伴います。一般的には2-7歳に発症することが多く、ほとんどは16歳までに治ります。乳幼児期に発症した吃音症は一過性で治りやすいのに対し、年長児の場合は頑固に持続することがあります。

 乳幼児期では、吃音のきっかけになる不安や緊張、欲求不満などの原因が比較的単純で、親子関係を調整するなど、対策が立てやすいのかもしれません。しかし、あなたのお孫さんのように年長になっても改善しない場合は、治りにくくさせている要因を考え、対応しなければなりません。

 対応の基本は、子どもの焦りを取ることと、自尊心を傷つけないように温かく支援してあげることです。しかし、簡単でないかもしれません。

 子どもは話し始めると、どもるかもしれないと不安になったり、流ちょうに話さなければいけないと緊張すると、かえって吃音が強くなります。特に初対面の人との会話や、面接などの際は、よけいにひどくなるかもしれません。

 吃音が強くなりそうな場面では、会話を早く切り上げたり避けたりしようとします。言いたいことが言えずじまいになることが多くなり、いら立ちを覚えます。ゆっくり話そうとしても、やっぱりどもってしまうことで、どうしたらよいのか分からなくなります。吃音のことが頭から離れなくなり、さらに緊張が高まって悪循環を引き起こします。なかなか治らないことで自信がなくなり、学業に専念できなくなったり、就職のことなど、将来にも不安を抱いたりするようになります。早く治そうとする焦りは逆効果です。

 また、周囲が吃音に強い違和感や不安を持つと治りにくくなります。「早く治さないと、いじめられるぞ」とか「お前は神経質だからどもるんだ」などの無理解な対応は、子どもをますます追い詰める結果になります。

 吃音の強さは状況によって変化し、一人で声を出して本を読んだり、歌ったりしているとき、あるいはペットと話しているときには消えています。このように流ちょうに話せるときがあることを取り上げ、治ることを強調してあげましょう。

 吃音を避けるために、緊張するような特定の会話状況を避けたり、ある単語や音声を避けようとすることも認めてあげましょう。会話が滞っているときに、まばたきや頭を動かすなどの行動が見られても、指摘したり注意したりしないでください。「人前で緊張するのはまじめな性格だからよ」とか「吃音が出ても構わないと思って話してみましょう」などと安心させる言葉も必要です。

 学校などの集団生活では、欠点を取りたてて指摘する人もいますが、ほとんどの人は理解してくれていることも伝えておきましょう。家族は干渉しないほうがよいのでは、などと吃音のことをだまっていると、子どもは放っておかれたと思い込むかもしれません。家族や周囲の人たちは、子どもが欠点と思っていることに耳を傾け、受容することが大切です。子どもに安心感を持たせ、自信の回復を導いてあげることで、吃音は改善すると思います。

 個別の対応については、心療内科か心身症の専門家へのご相談をお勧めします。

徳島新聞2000年4月23日号より転載

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