【質問】 指関節が曲がらない
69歳の女性です。一昨年秋ごろから中指の関節が曲がりにくくなり、手のひらに付かなくなりました。無理に押し付けようとすると、元に戻らず、反対に無理に伸ばすと、コツコツと音がして痛みます。医師には「バネ指」といわれました。次第に悪くなるので、昨年6月に中指の下をV字型に切る手術して、その後、温熱療法とレーザーマッサージをしていますが、よくなりません。こうした症状が出る前に、中指の付け根に小豆大のグリグリができたことがありましたが、何か関係しているのでしょうか。治るのかどうか心配です。
【答え】 バネ指 -腱鞘全体の切開も考慮に-
堀口整形外科医院 院長 堀口 泰稔(板野郡北島町江尻)
バネ指は、医学的には狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)といわれているものの一つで、あなたの場合、中指を手のひら側に曲げる屈筋腱に発生しています。
〈図〉のように、屈筋腱は、指の付け根から指先へ向かってできた腱鞘(腱を包んでいるサヤ)のトンネル内を通っています。この腱鞘の入り口付近で、腱がコブ状に膨らんだり、腱鞘がはれたりすると、屈筋腱の通り道であるトンネル内に狭い部分ができるため、屈筋腱の滑りがうまくいかなくなります。
こうなると、指の曲げ伸ばしがしにくくなり、痛みも伴います。
あなたの質問にもあるように、中指の付け根にグリグリができていたというのは、このように肥大した屈筋腱のことだと考えられます。
ときには、指の付け根の腱鞘に、ガングリオンと呼ばれる良性の腫瘍(しゅよう)ができることもあります。この場合も、バネ指の原因となり、皮膚の上から触ってみると、小豆大のグリグリを感じることもできます。
バネ指は、男女、年齢を問わず発生しますが、中でも中年で、手をよく使う女性に多くみられます。
体質的な要因や、加齢による腱、腱鞘組織の衰えなどに加えて、指の過度の使用による使い傷みがプラスされて発生すると考えられています。若い人は、服薬や注射、局部を安静に保つなどの治療で治る傾向が強いのですが、高齢者では、手術が必要な人も多くみられます。あなたも手術されているようなので、手術について述べておきます。
手術は、屈筋腱を傷つけずに、狭くなった腱鞘のトンネルを縦方向(指の方向)に切開、あるいは部分切除します。こうして狭い部分を広げることにより、屈筋腱の肥大もとれます。もちろん、腱鞘のトンネルは無用のものではありませんから、トンネルの一部を切るか、全体を切るかは手術時の所見によって異なります。
全体を切開すると、屈筋腱が皮膚側へ浮かび上がるために、指の力が少し弱くなったり、細やかな指の動きができなくなったりする後遺症がでます。このため、部分的な切除や切開にとどめるように努力します。
あなたの場合、手術時に腱鞘のトンネルを一部残されたものと思われます。しかし、トンネルを全部切った場合でも、力仕事や細やかに指を使う人を除いて、日常生活にほとんど支障がでない程度の後遺症です。
今行っている温熱療法などをしばらく続けてみてください。バネ指が治らないようでしたら、再手術で腱鞘全体を切開することも考えられたらいかがでしょうか。まれにガングリオンが残っている場合もあり、これも手術で取れますから、主治医とよく相談してみてください。