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【質問】 1日に何度もおならが・・・

 30歳になる主人は、1日に何度もおならが出ます。家でくつろいでいるときは10分に1回の割合で、眠っているときにも1~2回はしています。出先では、家にいるときほどではないようですが、やはり何度か出ているようです。不快なにおいはなく、大きな音だけですが、なぜこれほどおならが出るのか、原因が分からないだけに心配です。本人はさほど気にしていません。どこか悪いところがあるのでしょうか。それとも精神的なものでしょうか。



【答え】 ガス症候群 -慢性腸炎か十分検査を-

兼松病院 名誉院長 岸 清一郎(鳴門市撫養町斎田)

 ご主人がガス症状に悩んでおられるようですね。おなかが膨らんだ感じや腹鳴り、おならなどをひっくるめてガス症状、またはガス症候群と呼んでいます。こうした症状に悩まされている人はすくなくありません。まず、おならの出る理由についてお話しします。

 人の腸管内には常に一定量のガスがたまっています。そのガスの7割は口から飲み込んだ空気で、そのほかに血液から腸管内に拡散したもの、腸内細菌による発酵、腐敗で作られるものが含まれます。

 こうしたガスは、腸管から血中に吸収されるか、口からゲップとして出るか、肛(こう)門からおならとして出ていきます。

 腸管内に多少ガスがあっても自覚症状はなく、多くなって初めて自覚するようになります。その感じ方は人によって異なり、わずかな量でも強く感じる人もいます。従って、腸管内にガスが増え、それを敏感に感じて腸管の運動が促された場合に、おならが増えるものと思われます。

 おならが増える可能性がある疾患に、空気えん下症や過敏性腸症候群があります。空気えん下症は、飲み込む空気の量が多い人で、神経質な人に多くみられます。

 人は食事や会話の際に絶えず少量の空気を飲み込んでいますが、大口で早食いしたり、飲み物を一気に飲んだりする習慣のある人、大きく息を吸い込んで早口でしゃべる人などは、飲み込む空気の量が多くなります。

 多くはゲップとなって出ますが、一部は腸管内にたまります。これに腸の機能異常が加わると多量のガスがたまり、おならが増えるのです。この症状になるとおなかが膨らんでくることもあります。

 また、消化不良、炭酸飲料の飲み過ぎ、高繊維食、炭水化物を多く含んだ食品の取り過ぎも、ガスがたまる原因となり、おならが増えることもあります。

 一方、過敏性腸症候群は20~30代の若者に多く、肉体労働者より頭脳労働者に多いとされています。主に慢性便通異常の症状を示しますが、おなかが膨らんだ感じやゲップ、腹鳴り、おならなどのガス症状を伴うこともあります。腹痛がある場合でも、排便やおならによって症状は軽くなります。

 また、自律神経症状がでることも多く、ときには不安や緊張、不眠などの精神症状を伴うこともあります。この病気には心理的な要因が密接にかかわってくることから心身医学的な配慮が必要とされています。

 さて、ご相談の件ですが、一度十分検査してみてください。その結果、例えば慢性の腸炎とか、炎症や腫瘍(しゅよう)によって腸管が狭くなっているとかの原因が見当たらなければ、ご主人の症状は消化管の機能異常に基づくものと思われます。

 しかし機能異常による症状とはいっても、どこまでが正常範囲で、どこからが異常か決められない場合が多いのです。日常生活に支障がある場合は、医師の生活指導を受け、食事療法、心理療法、薬物療法を総合的に行うことが必要でしょう。

徳島新聞2000年1月23日号より転載

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