【質問】 粘性のたんが多く出る
89歳の男性です。7~8年前から慢性気管支炎にかかり、呼吸器専門医にかかっています。内服薬を飲み続けているのですが、全快しません。薬のおかげか、最近はせきは少なくなり、たん離れも良くなった半面、粘性のたん(灰白色や褐色など)が多く、1日に、5~10回も出るので困っています。アレルギーの薬や抗生物質などの内服薬を飲んでも治まりません。何か良い療法か、薬があれば教えてください。
【答え】 慢性気管支炎 -原因除去、気道を清浄化-
じぞうばし内科外科 院長 後東 俊博(徳島市西須賀町下中須)
慢性気管支炎と診断されているとのことですが、気管支炎に限らず“慢性”と名の付く疾患の多くは長期間、あるいは生涯にわたって付き合っていかなければなりません。そのために、ある程度病気の基本的な内容を知っておく必要があります。
慢性気管支炎の定義は「たんなどの気道分泌物が慢性的に出てくる状態が少なくとも2年以上続き、その状態が1年のうち少なくとも3カ月以上、大部分の日に認められる病気。他の呼吸器疾患や心疾患によるものは除外する」となっています。一部には副鼻腔炎(ふくびくうえん=ちくのう)を伴い、若くして発症する人もいます。しかし、ほとんどはあなたのように高齢で、愛煙家(多分あなたも長い喫煙歴をお持ちと思います)に発症します。
慢性気管支炎の治療の基本 1.症状悪化の原因を除去 ・喫煙は絶対不可(禁煙だけで症状は改善) ・汚染大気、刺激性ガスの吸入を避ける 2.気道の清浄化(たんを効果的に出す) ・体位ドレナージ ・吸入療法(薬剤多い) ・内服療法(気管支拡張剤など薬剤多い) ・去たん剤 ・マクロライド系抗菌剤 (少量投与での去たん効果が注目されている) 3.日常生活 ・十分な栄養、睡眠、適度な運動 ・居室の湿度の保持、清潔にも留意 4.呼吸器感染の予防(風邪、肺炎) ・うがい、手洗いの励行 ・インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種 ・発症時は早期受診し、完全に治療 5.急性期(呼吸不全出現時) ・兆候を知り、直ちに受診 |
まずこの病気が慢性かつ不可逆性の病気で、根治することが非常に難しいことを理解していただきたいと思います。
気管支は単に空気が通る管ではなく、その構造は実に複雑です。線毛上皮、粘液産生細胞、気管支腺(せん)、さらに他の免疫に関する多くの細胞や液状成分などから成り立っています。
真の原因はいまだ明らかではありませんが、加齢、喫煙、大気汚染、刺激性ガスなどが、これら気管支の構成成分に障害を生じさせ、特に気管支腺の肥大、粘液産生細胞の増加をもたらして、
たんが過剰に産出されるのがこの病気と考えられています。
たんの過剰分泌を正常に戻すことは困難です。このため、いかに効率よく出させるかが大切です。何気なく吐き出すたんですが、分析すると実に多くの成分からできており、この成分の変化によってたん離れがよくなったり、悪くなってせきで苦しんだりするのです。
治療の基本は、慢性期の管理を辛抱強く行うとともに、急性期の治療(感染の予防・治療、特に風邪は大敵)を適切に行い、より重い障害や肺気腫への進行を防ぐことにあります。病状を悪化させる原因の除去と、気道の清浄化(たんを効果的に出す)が治療のポイントで、簡単に〈表〉にまとめてみました。
この病気は人によって病態が異なります。最も大切なことは常にかかりつけ医を信頼し、自分の病態に合った管理、治療法を選択してもらい、根気強く続けることです。
〈表〉にある薬剤は多くの副作用もあり、必ず医師の管理のもとに使用すべきです。あなたの文面では、最近たん離れもよくなり、せきも少なくなっているようで、一応の成果は上がっていると思います。「治りきらない」と不安感を持たず、地道に治療を続けてください。
たんの過剰分泌を正常に戻すことは困難です。このため、いかに効率よく出させるかが大切です。何気なく吐き出すたんですが、分析すると実に多くの成分からできており、この成分の変化によってたん離れがよくなったり、悪くなってせきで苦しんだりするのです。
治療の基本は、慢性期の管理を辛抱強く行うとともに、急性期の治療(感染の予防・治療、特に風邪は大敵)を適切に行い、より重い障害や肺気腫への進行を防ぐことにあります。病状を悪化させる原因の除去と、気道の清浄化(たんを効果的に出す)が治療のポイントで、簡単に〈表〉にまとめてみました。
この病気は人によって病態が異なります。最も大切なことは常にかかりつけ医を信頼し、自分の病態に合った管理、治療法を選択してもらい、根気強く続けることです。
〈表〉にある薬剤は多くの副作用もあり、必ず医師の管理のもとに使用すべきです。あなたの文面では、最近たん離れもよくなり、せきも少なくなっているようで、一応の成果は上がっていると思います。「治りきらない」と不安感を持たず、地道に治療を続けてください。
徳島新聞2000年1月9日号より転載