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【質問】 長話で胸が苦しくなる・・・

 71歳の姉が、昨年夏ごろから話が思うようにできなくなっています。話を長くすると、胸のあたりが苦しくなるようです。近所の医師にお世話になって、MRIやCT、超音波の検査などをしたところ、首の血管が少し太くなっているとのことで、朝1回、薬を飲んでいます。しかし、症状が軽くならないので心配です。医師は、首の血管の異常で話ができないようにはならない、と言っていました。どこに原因があるのでしょうか。



【答え】 頚動脈狭窄症 -手術で血栓の切除を-

田岡病院 脳神経外科部長 村山 佳久(徳島市東山手町1丁目)

 ご質問の症状からしますと、話をしているときにうまく言葉がでなかったり、ろれつが回りにくくなる言語障害と思います。そして検査の結果、首の血管、つまり頚(けい)動脈に異常があったのでしょう。頚動脈の異常でよく見られるものは狭窄(きょうさく=血管が細くなる)ですが、血管が太くなっていると言われたのは、おそらく狭窄部に潰瘍(かいよう)ができて、一部が太く見えたのではないでしょうか。

 頚動脈が細くなり潰瘍ができると、そこには小さな血栓ができやすくなります。朝一錠の薬は血液をさらさらさせて、血栓をできくくしているのでしょう。ご質問を以上のように理解しましたので、脳梗塞(こうそく)の原因となり得る頚動脈狭窄症と、その治療法である血栓内膜切除術についてお話しします。

 この治療は頭ではなく首の手術ですが、脳神経外科の治療の対象となります。加齢とともに動脈硬化が起こり、血管の壁が変性し、狭窄が進むと、血液が狭いところを通過するために雑音を発生するようになります。聴診器を首のところに当てるとザーザーと雑音がし、狭窄の存在が疑われます。また、ご質問の方のように、一時的な言語障害のほかに、手足の力が急に抜け、物をポロリと落としたり、片方の視野が真っ暗になるなどの症状がありますと、頚動脈が細くなっている可能性があります。

 検査としては、磁気を使用したMRAがあります。MRIは最近よく行われますのでご存じと思いますが、同じ検査法で血管に条件を合わせたのがMRAで、造影剤を使わずに血管の状態を知ることができます。

 造影剤を使用する検査では、3D-CTアンギオグラフィーという検査があり、腕の静脈から造影剤を注入し、CTスキャン撮影を行い、特殊なコンピューター解析で頚動脈を立体的に写しだすものです。外来でできますので入院の必要はありません。さらに、動脈にカテーテルを挿入して動脈を検索する従来行われている脳血管撮影法があります。

 これらの検査で頚動脈の狭窄が認められ、その狭窄度が60~70%以上あるか、それ以下でも狭窄部に潰瘍があったり、先に述べたような症状がある場合には手術が必要となります。また、このような人は、心臓の血管にも同じような狭窄が存在することがあります。これは心筋梗塞の原因になりますので、あらかじめ心臓の血管を撮影する検査も必要となることがあります。

 以上の検査で、総合的に手術が必要かつ可能と判断されますと、血栓内膜切除術を行います。これは首のところを約10センチ切開し、頚動脈を露出します。そして、一時的に血流を遮断して頚動脈を開放し、狭窄部の肥厚、変性した動脈の内膜を切除します。そして動脈を細い糸で縫合します。手術時間は約3~4時間です。狭窄度が小さいか検査の結果、手術が不可能な場合は、薬物治療を行うことになります。薬物治療の目的は血液をさらさらとした状態にして、血栓ができにくくしておくことです。

 以上、頚動脈狭窄症について説明しましたが、重大な脳梗塞の原因となる病気ですので、一時的な言語障害や手足のまひだと安易に考えないで、脳神経外科で頚部(首)の検査も受けるようにしていただきたいと思います。

徳島新聞1999年8月22日号より転載

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