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【質問】 発病から7年 治療法は 

 56歳の母の更年期障害について教えてください。私の母は7年前、胸のどうきとめまいで病院に運ばれ、「更年期障害でしょう」と診断されました。その後、足元からカーッと熱くなる、頭が真っ白になる、イライラや寂りょう感、過去の嫌なことが頭に浮かぶ、不眠、自信がなくなって先のことが心配-など、色々な症状が出て病院を転々としました。「うつ病」というのが最終的な診断で、入院もしましたが、本人が嫌がり薬もあまり効かず、すぐ退院しました。今は通院していませんが、家庭では寝たり起きたりの状態です。何もする気がしないらしく家事もせず、いつも悲しそうな顔をしています。ホルモン補充がよく効くと聞きますが、発病から7年経過した今からでも治るのでしょうか。何かよい方法があれば教えてください。



【答え】 更年期のうつ状態 -病状見極めて根気よく-

徳島大学医学部 産婦人科助手 安井 敏之

 ご質問は更年期障害、特にうつ状態の治療についてですので、まず更年期障害についてご説明いたします。

 一口に更年期障害といっても症状は実に多彩です。通常は卵巣から分泌される女性ホルモンが、更年期ごろに欠乏することによって現れてくるさまざまな症状のことを指します。

 その中には「ほてり、のぼせ、発汗」といった血管運動神経障害症状、「不眠、不安、憂うつ、記銘力低下」などのの精神障害症状、「肩凝り、腰痛」といった運動器官系症状、「尿失禁、膣の乾燥感、性交痛」などの泌尿生殖器系症状などに分類されます。

 最近では、慢性の女性ホルモン欠乏症状として、骨粗しょう症や動脈硬化も含まれるようになっています。

 これらの治療法として、ホルモン補充療法という言葉をよく耳にします。しかし、これは特に「ほてり、のぼせ、発汗」などに100%近い効果がありますが、それ以外の症状、特に精神障害症状については、海外での報告で30~50%、日本での報告でも50~60%で、残念ながらすべての患者さんに効果があるわけではありません。

 また、ホルモン補充療法には、子宮からの出血や乳房痛などの副作用もあり、よく理解してから治療を始めなくてはなりません。

 今回ご相談のお母さんは7年前にどうき、めまい、ほてり、イライラ感、不眠、憂うつなどが現れており、もし他の病気が原因でなければ、更年期障害であると考えられます。ところが、時間の経過とともに、「うつ状態」が強くみられるようになってきています。

 このような精神障害症状の原因は非常に複雑です。最初はほてりやのぼせが強く、それが不眠の原因になり、やがて体力が消耗して日常生活の活動性が低下し、うつ状態が現れるといった、ドミノ倒しともいえる状態が起こってくるとともに、本人の性格や家庭内における変化(例えば、更年期ごろになると子どもが大学、就職、結婚などで自立していく)などが重なり、さらにうつ状態が強くなってきます。

 紙上での質問ですので詳細は分かりませんが、このようなうつ状態が強くみられる場合は、ホルモン補充療法のみでの効果は期待できなことが多くなります。心療内科医や精神神経科医にも相談し、うつ病かどうかも見極めながら、根気よく治療を続けていくことが必要と思います。

徳島新聞1999年3月28日号より転載

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