徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 首を痛め 手にしびれ

 48歳の主婦です。3年前にハシゴから落ちて、右の首筋がこぶ状にはれました。すぐ整形外科でレントゲンを撮りましたが、異常はなく、湿布で治療しました。それ以降、肩がこると「しこり」が目立つくらいにはれ上がります。昨年春、右側の首から肩、ケンビキがパンパンにはれ首が回らなくなって検査をしました。その時はスジが張っていたので痛み止めと湿布をもらい、1週間ほどで良くなりました。ところが昨年暮れから、左右の手首から指先まで感じないくらいしびれています。腕の付け根から指先まで、しびれる時もあります。適切な治療はないのでしょうか。



【答え】 頸椎椎管板ヘルニア -安静に、効果なければ手術-

斎藤整形外科 院長 斎藤 義郎(鳴門市撫養町小桑島)

 「しびれ」の適切な治療法はないのか、とのご質問と思われます。

 頸部(けいぶ)のしこりは、頸部筋や筋膜を損傷したあと治療したものと思います。頚部痛やしこりなどはあまり心配ありませんが、今回のしびれはよく検討する必要があると思います。

 しびれは中枢神経・脊髄(せきずい)・末しょう神経レベルでの障害、循環障害による虚血などで起きます。しびれを引き起こす疾患としては、頚椎症、頸椎椎間板ヘルニア、脳こうそく、糖尿病などがあります。

 しびれの訴えには、ジンジン感、ピリピリ感という異常な感覚や、感覚が鈍くなるといったものがあり、時には運動まひの意味も含まれることがあります。

 あなたの場合、両手首から指先までのしびれ以外の所見がはっきりしないので確定できませんが、40代で3年前に頚部外傷があり、時々頚部痛、肩こりも見られることから、まず頚椎椎間板ヘルニアを考えるのが妥当と思われます。

 頸椎椎管板ヘルニアによる多彩な症状のうち、ご質問に関係があると思われる「神経根症状」と「精髄症状」について簡単に説明します。図を見てください。

 神経根症状とは、椎管板線維輪の一カ所に弱いところができて、椎管板が膨らみ、盛り上がることや、髄核の脱出(ヘルニア)によって神経根が圧迫され、神経根の刺激症状やまひ症状で首から肩、上腕にかけて痛みが走ったり、手指のしびれ感が現れたり、筋力の低下がみられることです。

 次に、脊髄症状とは、ヘルニアで脊髄が圧迫され、両手指の屈伸が早くできなくなったり、指の開閉運動がしにくくなる症状や、しびれ感(主に手袋をはめているような知覚障害が多い)、痙(けい)性まひ性歩行障害が見られることを言います。

 治療法には保存的治療と手術治療があり、神経根症状には、保存的治療が適しています。背傷症状の場合、軽症だと保存療法も有効ですが、手足のまひが急速に進んだり、歩行障害が出るようなら、手術療法を考えなくてはなりません。

 患者さんは、治療といえば注射、内服、手術といった有形の「もの」でないと認めない傾向がありますが、治療法としてはまず「安静」が基本になります。

 首に作用する頭の重さをいかに軽くするか、に尽きると思います。一番楽な姿勢で床について寝たり、まくらの工夫、「頚椎カラー」などの装具療法、安静を保つための頸部持続けんいん、温熱、低周波などの理学療法も有効です。局所麻酔剤による神経ブロック、非ステロイド性の消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの薬物療法も行います。以上のような保存療法で効果がなければ、手術療法になります。

 知覚・運動障害は、その時その時の的確で素早い判断を必要としますので、何はともあれ、整形外科の専門医の診察を早く受けられることをお勧めします。

 外来診察での身体的所見に加えてレントゲン検査、さらにCT、MRIなどの精密検査による画像診断ができますので、適切な治療方針が立てられると思います。

徳島新聞1999年3月21日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.