【質問】右太ももが冷たい
80歳の女性です。2年前から骨粗しょう症で整形外科に通院しています。飲み薬を服用し、2週間に1度、肩への注射を続けています。ことし9月に畑仕事で右腰を痛め、レントゲン検査の結果、根性座骨神経痛、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症と診断されました。右太ももが冷たく痛みやしびれを感じます。湿布薬で痛みを和らげていますが、注射に頼るのは良くないと聞きます。治す方法はあるのでしょうか。
田村病院 田村阿津王 先生
【答え】一定期間は保存療法継続を
背骨には、脊柱管と呼ばれる筒状の空洞があり、神経の通り道となっています。加齢により背骨の骨関節の変形、靱帯(じんたい)の変性などが起こると、脊柱管が狭くなります。この状態は脊柱管狭窄と呼ばれており、腰椎(ようつい)に多く見られ、座骨神経になる前の神経が圧迫されて症状が生じます。
腰部脊柱管狭窄症には、脚の痛みと、この病気に特徴的な間欠跛行(かんけつはこう)と呼ばれる症状があります。間欠跛行とは、歩くとしばらくして脚に痛み、しびれ、重だるさが出て、やがて辛抱できなくなって歩けなくなるものの、腰を掛けて休んだり、腰を前にかがめたりすると脚のしびれなどが取れて、また歩けるようになる状態のことです。
ご相談の女性は、右太ももが冷たく、痛みやしびれを感じるとのことですが、間欠跛行が出ているかどうか相談内容からは分かりませんので、腰部脊柱管狭窄症について一般的な説明をします。
背骨を輪切りにしたときの脊柱管内には、馬尾、神経根という神経があります<図参照>。腰部脊柱管狭窄症は、どの神経が圧迫され障害されているかによって▽馬尾が障害される「馬尾型」▽神経根が障害される「神経根型」▽両方が障害される「混合型」-の三つに分けられ、治療方法が異なることがあります。
間欠跛行は、どのタイプでも出現することがありますが、神経根が障害されると腰から脚にかけての痛み、馬尾が障害されると両脚の広い範囲のしびれや脱力感、脚や会陰部の異常感覚、頻尿や便秘などの排尿・排便障害の症状が見られることがあります。
保存治療は痛み止めやビタミン剤、神経の血行改善薬などの薬による治療、コルセットによる腰の固定、腰の筋肉の緊張を和らげる低周波などの物理療法を行います。脚の痛みが強かったり間欠跛行がひどかったりする場合は、腰の神経の周囲に麻酔薬を注入する神経ブロックも考えます。
足腰の強い痛みが落ち着いたら、できるだけ自分で動いて徐々に足腰のストレッチングや筋力を強くする訓練を始めます。また▽歩くときはカートや杖を利用する▽重い物の持ち上げや腰をひねったり反らしたりするのは避ける▽同じ姿勢を長時間続けない-など、神経を痛めるような動作や姿勢を避ける日常生活の工夫も大切です。
一定期間、保存療法を行っても症状が改善されず▽脚の筋力低下▽尿が出にくい▽間欠跛行がひどい-などの症状があり、日常生活への支障が大きい場合は手術療法を考えます。手術は必要な範囲の除圧手術(後ろから背骨を削って神経の圧迫を緩める)を行いますが、金属などを用いた脊椎固定術が必要かどうかは詳しい検査をして決めます。
腰部脊柱管狭窄症について説明しましたが、主治医とよく相談の上、症状の経過を見ながら、まずは保存療法を続けてみてください。