【質問】禁煙後の再喫煙、治したい
40代男性です。1年前、胆石を除去する手術を受けたのを機に禁煙しました。禁煙外来で治療を受け、完治したと思っていたのですが、最近になって再びたばこを吸うようになりました。普段は吸いませんが、お酒を飲んだり、ストレスを感じたりすると我慢できなくなります。いい方法はないでしょうか。
きたじま田岡病院呼吸器外科 森本広次郎先生
【答え】原因、正しく理解して
習慣的喫煙はニコチン依存症という病気であり、禁煙外来で治療が受けられます。相談者は禁煙外来での治療が一度は成功していたとのこと。実際に禁煙外来での失敗例も酒席、転職などによるストレスで吸い始めたということが多いのです。
ここでは、なぜ再び喫煙してしまったのかを考えてみましょう。そのために、ニコチン依存症には身体的依存と心理的依存があることを理解する必要があります。
[身体的依存]たばこを吸うとニコチンは肺から吸収され、数秒で脳内に達します。ニコチンが脳に存在するニコチン受容体に結合すると、ドーパミンやβエンドルフィンなどの幸せを感じたり、ストレスを軽減させたりする物質が放出されます。
これらを脳内麻薬様物質といい、本来きれいなものを見たり、おいしいものを食べたりしたときの幸福感や、きつい運動後の爽快感の元となるものです。人間の脳には、この物質を放出する機能が備わっています。
ところが、たばこを吸い続けることにより、ニコチンがないと脳内麻薬様物質が放出されなくなります。その結果、たばこを吸わないといらいらしたり、落ち着かなくなったりする禁断症状が現れます。
たばこを吸うと一時的に治まりますが、しばらくすると再びニコチン切れとなり、たばこを吸いたくなります。ニコチンの身体的依存です。
[心理的依存]たばこを吸うと得られる幸福感やリラックス感は、深く記憶に残ります。また、食後の一服といった習慣や癖が出来上がり、たばこがないと不安で仕方なくなってしまいます。これが心理的依存です。
このように、ニコチンは巧妙に身体的依存と心理的依存を織り交ぜ、たばこを手放せなくさせます。相談者は40代ですから、おそらく喫煙歴は20年以上でしょう。その間、たばこを吸うたびにニコチンが作り出した偽の爽快感や幸福感にさらされ、喫煙することが真のストレス解消につながると記憶しています。
酒席で吸ってしまうのは、酔って抑制が弱くなり、記憶にある昔の快感を求めるからです。ストレスのあるときに吸ってしまうのも、かつてたばこでリラックスできたという記憶が強く残っているからです。再喫煙の原因は以上の通りです。
相談者は普段は吸っていないのだから、ニコチン依存症について正しく理解し、喫煙者になる前の自分を取り戻すことで必ず禁煙できます。
最後に、禁煙外来での治療は薬剤とカウンセリングが基本です。身体的依存は治療薬で比較的容易に克服できますが、心理的依存の強い場合は、個々に応じてカウンセリングを行います。
相談者は心理的依存が主体だと思われます。禁煙が困難な場合、再受診してカウンセリングを受けるのも良いでしょう。その際も治療薬を併用することが効果的です。一度の失敗で諦めず何度でもトライしてください。