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【質問】脇の臭いが気になる

 20歳の娘から、わきがの手術をしたいと相談されました。本人が気にしているほど臭いは感じませんが、学校で友人から指摘されることがあり、悩んでいるようです。手術をすればどの程度治るのでしょうか。気を付ける点や、傷口がどうなるのか教えてください。

徳島赤十字病院形成外科 長江浩朗 先生

【答え】制汗剤使用や汗腺切除を

 娘さんは脇の下の汗、臭いにお悩みのようですね。まず、なぜ脇の下に汗をかきやすいのかということから説明します。

 人体には2種類の汗の腺があります。エクリン汗腺とアポクリン汗腺です。エクリン汗腺は全身の皮膚に分布し、体温調節や、皮膚に適当な湿度を与える働きがあります。アポクリン汗腺は腋(えき)窩(か)、乳輪乳頭、外陰部などに分布しています。ほ乳類の芳香腺が退化したもので、思春期に急激に発達します。

 脇の下特有の臭いは、アポクリン汗腺から分泌された脂肪酸が、皮膚に常在する細菌によって分解されることで生じるといわれています。人種により差があり、日本では約1割の人にみられるのに対し、欧米では約7割の人に臭いがあります。したがって、欧米では疾患として問題になることはありません。

 ここまでの説明で分かっていただけたと思いますが、生理的な汗、臭いに個人差があるという程度のものなので、治療の対象になるかどうかは、ご本人の主観的要因が大きく影響します。

 [保存的治療]脇毛をそり、市販の消臭剤、制汗剤を使用します。これで効果が十分でない場合は、塩化アルミニウム液を外用する方法があります。汗腺の出口をふさいで汗の分泌を抑える効果があります。市販のものもありますが、使用法によってはかぶれることがありますので、医療機関で指導を受けた方が無難でしょう。

 最近、ボツリヌス毒素を腋窩に注射する治療が一部で行われています。3~6カ月間は効果があるようですが、保険適応はないので自費診療になります。

 [外科的治療]現在、よく行われている手術は反転剪(せん)除(じょ)法です。局所麻酔の注射をした後、腋窩の皮膚をしわが寄る方向に5センチ程度切開します。切開した所から、脇毛の生えている範囲より少し広くアポクリン汗腺の直下で皮膚をはがしていきます。次に裏返してはさみで丁寧にアポクリン汗腺を切除します。十分切除したら縫合し、圧迫固定して終了です。

 アポクリン汗腺の周囲には細い血管がたくさんあるため術後、血が溜(た)まることがあります。それを予防するためには創部の安静が必要です。また、血が溜まったときには、翌日に傷を開けて止血しなくてはなりません。

 このため入院治療になるか、外来通院でも何日間かは毎日処置が必要です。皮膚をぎりぎりまで薄くするため、傷の治りが悪いことがよくありますが、最終的な傷痕にはほとんど影響ありません。この治療は保険適応になっています。最も確実な方法ですが、完全に臭いがなくなることはありません。

 このほか、小さく切開して超音波メスでアポクリン汗腺を破壊して吸引する方法、表面からマイクロウェーブを当てる方法などありますが、保険適応はありません。

 いずれにしても一度、形成外科医に相談することをお勧めします。

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