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【質問】声帯が腫れ、声が出にくい

 60代の女性です。カラオケが趣味ですが、1、2年前から高音が出にくくなりました。中音でも喉に引っ掛かるときがあります。病院でカメラ検査をした結果、声帯が腫れており「なるべく声を出さない方がいい」と言われました。カラオケはやめるつもりです。投薬は受けていませんが、早く治すために日常生活で気を付けることがあれば教えてください。

幸田耳鼻咽喉科医院  幸田純治 先生

【答え】力を抜いた発声を

 声はコミュニケーションの手段としてとても大切なものですから、声が出にくくなるのはつらいことですね。

 特に高音が出しにくいとのことですが、高音を出すためには声帯を緊張させる必要があります。ですから、高音での発声は低音より声帯に負担が掛かるのです。このため軽度の異常では、まず高音が出しにくくなります。ひどくなると中音や低音にまで声枯れが及んできます。

 カメラ検査を受けられているようですので、がんやポリープなどの可能性は否定されていると思います。声帯が腫れているとのことですが、どのような腫れだったのでしょうか。

 声帯全体の腫れは風邪などの炎症で引き起こされますが、声帯の中央部に強い腫れがあるようでしたら声の酷使による炎症が疑われます。浮腫を伴う腫れなら、たばこなどによる慢性炎症を疑う必要があります。声帯だけではなく周囲の腫れもあるようなら、逆流性食道炎による胃酸の逆流が声帯に影響している可能性があります。

 このように、腫れはいろいろな原因で起こりますが、まずは声帯を安静にすることが大切です。声帯の安静とは、声を出さないことにほかなりません。病院で「なるべく声を出さない方がいい」と言われたのはこのためでしょう。声を出す場合でも、声帯に負担の掛かりにくい発声を心掛けるべきです。

 声帯に負担の少ない発声方法を指導したり、日常生活での注意点を教えたりすることを「声の衛生指導」と言います。発声方法の指導としてはまず、叫んだり、大声を出したりしないように指導します。

 騒音下では声が大きくなりやすいので、騒がしい所ではしゃべらないようにしましょう。声の高さも大切で、高すぎる声は負担が掛かります。声域の下限から2~3音上げた高さが、一番楽な発声ができるとされています。

 力んで声を出すと、左右の声帯が擦れ合って傷みやすくなります。力を抜いて共鳴で響かせるような発声を心掛けてください。そのためには口を大きく開けて話すようにするとよいでしょう。咳(せき)払いもできるだけ避けてください。咳は左右の声帯が強くぶつかって起きるからです。

 日常生活で最も注意すべきことは喫煙です。たばこは少量でも声帯に悪影響を与えますので、絶対に吸わないようにしましょう。飲酒は少量であれば問題ありませんが、過度の飲酒はアルコールによる血管拡張作用で声帯が浮腫や腫れを起こしてしまいます。

 湿度も大切です。喉には粘液を出す細胞があり、声帯は粘液によって覆われています。これが潤滑油の働きをするとともに、振動する声帯を冷却する役割も果たしています。良い声のためには声帯が潤っている必要があります。

 この粘液は加齢によって次第に減少し、声帯が乾燥しやすくなります。粘液が減少しなくても冷暖房などによって乾燥することもあります。加湿に努めてください。

 コーヒーはカフェインを含むため喉が乾燥しやすくなりますので、ほどほどにすべきです。風邪をひかないようにすることも重要です。声を早く治して、再びカラオケで歌えるように頑張りましょう。

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