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【質問】手術から2年 時々痛む

 50代の男性です。いぼ痔がひどくなって脱肛になり、2年前に手術しました。おおむね治っていますが、時々、痛みを感じたり、違和感を覚えたりして歩行が不自由なときがあります。今後もこの状態は続くのでしょうか。完全には治らないのでしょうか。

医療法人新浜医院 森俊明 先生

【答え】生活や排便習慣 改善を

 脱肛とは排便時などに肛門から直腸の粘膜組織が出てくる状態のことで、肛門粘膜脱ともいいます。一般的には痔核(いぼ痔)が大きくなって、直腸粘膜を伴って肛門の外に出てしまう状態のことを指します。

 相談者が痔の根治手術を受けられてから2年が経過して、ほぼ問題ないようでしたら手術は非常に有効な治療法であったと推察されます。

 一方、痛みについての相談ですが、肛門の痛みの種類、程度はさまざまです。場合によっては生活の質を著しく低下させるため、相談者は大変お悩みのことと思います。

 肛門に関連する痛みの種類には、肛門そのものによる比較的鋭い痛みと、もっと奥の直腸や骨盤内臓器が原因となる鈍く重い痛みがあります。

 これらの診断としては症候性(肛門疾患、直腸・泌尿生殖器・筋肉・靭(じん)帯(たい)などの骨盤内臓器の病気や腰椎・脊髄の病気、外傷など)と無症候性に分けられ、前者は原因となる病気を治療することが大変重要となります。

 無症候性のものは、診断・治療に難渋することが多いようです。理由は、病気の原因の特定が困難なことや複数の原因が絡み合っていることが挙げられます。

 一般的には、肛門を締める筋肉(肛門括約筋)や肛門を支える筋肉(肛門挙筋)の痙(けい)攣(れん)や過剰な収縮が原因とされ、いわば肛門の筋肉痛・凝りです。別名「肛門挙筋症候群」とも言われることもあります。

 症状としては突然(夜が多い)、肛門の奥の方がきゅっと締め付けられるような痛みで発症します。しかし、精密検査をしても明らかな異常所見はありません。排便とは無関係なことが多いのですが、直腸内に便があると無意識に筋肉の過剰収縮が起きるので排便することによって楽になる方もいます。

 このような症状が家庭で起こったとき、体の緊張をほぐして筋肉を緩め、痛みを和らげるのには入浴が効果的です。ストレスなどによる緊張をほぐすために安定剤を処方することもあります。坐薬(ざやく)や肛門注入用の軟(なん)膏(こう)は有効である一方、挿入自体が刺激となり、症状を悪化させることがありますので注意してください。

 発症予防のために、便秘があれば食生活の改善、運動不足やストレスの解消など、生活環境を整えることも重要です。

 相談者の場合、痛みの程度や頻度の増加によっては、症候性肛門痛の原因となる病気の可能性についての検査を考慮されることをお勧めします。同時に、無症候性肛門痛の原因となる生活環境や排便習慣などの改善を図ることが大切と考えられます。

 

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