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 【質問】孫娘の診断結果が心配

 孫娘が「多嚢(たのう)胞性卵巣症候群」と診断されているようです。昼間にアルバイトをしながら定時制高校に通っていますが、今はアルバイトをやめています。どのような治療法があるのか教えてください。

 徳島大学大学院 産科婦人科学分野 松崎利也 先生

 【答え】治療の判断 基礎体温で

 多嚢胞性卵巣症候群という名前から、何か怖い印象を受けてしまいますね。しかし深刻な症状はなく、女性の20~30人に1人の割合でみられます。病気と言うよりも「月経不順の体質」と言った方が適切かもしれません。治療も簡単で、アルバイトを休む必要はありません。あまり心配することはないですよ。

 多嚢胞性卵巣症候群は、英語名を略してPCOSと呼ばれています。PCOSの特徴は月経不順、卵巣の多嚢胞所見です。多嚢胞所見とは卵巣の中に見える小さな卵胞(らんぽう)の数が多いことで、超音波検査で分かります。

 PCOSの約5人に1人は、にきび、多毛、肥満を伴っています。PCOSの原因はまだ分かっていませんが、卵巣で男性ホルモンができやすい性質が関わっているようです。さらに、肥満は病態を助長します。

 PCOS以外にも月経不順を来す疾患はあります。ダイエット、ストレス、過度の運動などで起きる月経不順は、原因が解消されたら治ります。また、お産の後に月経不順になることや、脳腫瘍が原因のこともあります。

 一方、PCOSの月経不順にはきっかけがなく、初経のころからずっと続いているのが最大の特徴です。月経周期は2~3カ月に1回程度が多く、時には3カ月以上もない状態(無月経)になります。PCOSの月経不順は一人一人違いますので、治療が必要かどうかを見分けるために、しばらく基礎体温(寝起きの体温)をつけてみましょう。

 月経不順でも、月経の前に1~2週間の高温期(月経後の低温期から0・3度ぐらい高い時期)があれば、治療はしなくてよいと思います。低温相ばかりの一相性で次の月経になるようなら、女性ホルモンによる治療が必要です。低温一相性の月経不順を放置していると、子宮の病気にかかる恐れがあるからです。しかし、ホルモンの治療をしていれば、そのような危険はありません。

 治療は、黄体ホルモン(女性ホルモン)の薬を月に7~10日間飲むだけで、副作用もほとんどなく簡単なものです。にきびにも悩んでおられ、月経不順と同時に治療したいのなら、低用量経口避妊薬(ピル)を使います。

 肥満体形でしたら、この際、ダイエットにチャレンジしましょう。体重が5~10%減ると、月経不順は70~80%と高い割合で改善します。ただしダイエットが難しいのも事実です。一つの方法として機能性食品をお勧めします。

 機能性食品はカロリーが低く、他の栄養素は入っています。粉を水や牛乳で溶くタイプのものが多数発売されています。1日1~2食を機能性食品に置き換えれば、健康的に痩せることが可能です。

 またPCOSの方は、年とともにメタボリック症候群、糖尿病、高血圧などになりやすい傾向があり、それは肥満を伴う場合に顕著です。その意味でも太り過ぎには注意しましょう。

 PCOSの方は月経不順のため、妊娠しにくいことがあります。将来、妊娠を望む時期になれば排卵を誘発する治療が必要かもしれませんが、それはその時に考えればよいことです。PCOSは妊娠できない体質ではありませんのでご心配なく。

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