【質問】睾丸が大きくなった
60代の男性です。睾丸(こうがん)が大きくなり、重く感じる状態が続いています。以前、お笑いタレントが睾丸摘出手術を受けたケースと同じ症状だと思います。健康診断では血小板数の減少で再検査、尿潜血検査は陽性で放置可能と指摘されました。私も手術をした方がいいのでしょうか。
川島病院泌尿器科 横田成司 先生
【答え】ためらわず早く受診を
「睾丸が腫れた」といって病院を受診する場合、陰嚢(いんのう)の中にある精巣(睾丸)そのものが腫れている場合と、精巣に付属している臓器が腫れている場合があります。陰嚢は解剖学的に極めて狭い範囲に限られている部分にもかかわらず、それが腫大する病気は多数存在し、腫瘍、水の貯留、炎症、捻転、外傷といろんな原因が考えられます。
腫大して痛みを伴うものと伴わない場合があります。痛みはなく、大きく腫れている状態で、60代という年齢からみて、まず考えうる代表的な疾患としては、精巣腫瘍、陰嚢水腫が挙げられます。
まず精巣腫瘍は必ず考えなければなりません。日本では年間10万人あたり1~2人と比較的稀(まれ)な病気ですが、進行が早いことが特徴で、約30%は進行癌(がん)で発見されるとの報告もあります。
痛みを伴わずに睾丸が大きくなってきたり、しこりを感じたりする場合がほとんどで、腫瘍が大きくなるにつれて不快感や牽引(けんいん)痛を伴うことがあります。早期から転移することが多く、転移による症状(エックス線検査での肺の異常陰影など)から見つかることもあります。
転移の場所としては後腹膜リンパ節(おなかの中のリンパ節)、肺、肝臓、骨、脳に多いとされています。さらに50歳以上の比較的高齢者の場合の精巣腫瘍は悪性リンパ腫というのも考えなければなりません。
悪性リンパ腫は血液疾患に分類され、免疫担当細胞というものを起源とし、全身のあらゆる臓器から発生します。ご相談の方は60代と高齢でありますし、直接関係があるか断定はできませんが、健康診断で血小板の減少という血液の異常も認めることから血液疾患である悪性リンパ腫も疑うべきでしょう。
精巣腫瘍の診断は触診で精巣の腫大を確認した後、精巣の超音波検査を行います。血液検査では腫瘍マーカーというものを確認し、CT(コンピューター断層撮影)検査で転移の有無を調べます。
治療方針は、まず高位精巣摘除術といって精巣を摘除する手術をした後に、その摘出した精巣の組織診断を行い組織型や病期によって決められます。精巣腫瘍は癌の中でも化学療法が比較的よく効きますので、転移がある場合でも、化学療法、放射線療法、外科療法を組み合わせた集学的治療が積極的に行われており、的確な治療をすることによって比較的高い治癒率が報告されています。
次に、陰嚢水腫とは精巣(睾丸)を包んでいる鞘膜(しょうまく)という膜の中に液体が溜(た)まった状態です。無痛性で、弾力性のある腫瘤(しゅりゅう)として感じます。診断時は、鼠径(そけい)ヘルニア(いわゆる脱腸)と間違わないようにしなければなりません。
診断は、まず触診を行った後、超音波検査をすることが容易で確実です。治療は中の液体を注射器で吸引することもありますが、一時的でまた溜まってくるので根本的に治すには手術が必要です。
睾丸の肥大というと恥ずかしさで病院の受診をためらってしまう場合があるかと思いますが、特に精巣腫瘍は進行が早く受診時には既に転移している可能性もあることから、早めの泌尿器科受診をお勧めします。