【質問】健診で脂肪肝と言われた
60歳を目前に控えた女性です。健康診断で脂肪肝との指摘を受け、食生活に気を付けるように言われました。体脂肪率は32%前後。悪化すると肝硬変になると聞き、本を読んだり簡単な体操をしたりと、自己流の対策をしていますが、どんな食事や運動が改善に効果的なのか分かりません。具体策があれば教えてください。
イワキ医院 居和城宏 先生
【答え】運動と食事療法で減量を
脂肪肝の原因は大きく分けて、お酒の飲み過ぎによる「アルコール性」と、栄養の過剰摂取など飲酒以外による「非アルコール性」があります。かつて肝硬変や肝臓がんは、慢性ウイルス性肝炎や大量の飲酒によって引き起こされると考えられてきました。しかし、現在ではウイルスやアルコールの影響ではない脂肪肝(非アルコール性)でも、肝硬変や肝臓がんになることが知られています。
ご質問の方は、医師から飲酒指導を受けていないようですので後者に該当し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に注意が必要です。NAFLDとは、メタボリック症候群による肝病変です。中年男性や高齢女性に発症の頻度が高く、成人の約30%に認められます。
NAFLDには病態がほどんど進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、病態が進行して肝硬変や肝臓がんの発生源となる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とに分けられます。NAFLD患者のうち、NASHに進行している人の割合(有病率)は把握されていませんが、3~5%と推定されます。
脂肪肝は、腹部超音波検査(腹部エコー)やコンピューター断層撮影(CT)検査で見つかることがありますが、NAFLDを診断するための特徴的な検査はありません。肝機能障害があれば、脂肪肝以外が原因の肝炎(ウイルス性肝疾患や自己免疫性肝炎など)の可能性を血液検査で調べ、除外します。加えて、飲酒歴がない場合がNAFLDとなります。
NASHを調べるには血液検査や画像診断では確定できないため、肝臓の組織検査が必要です。診断が難しい場合のほか、炎症や肝硬変の進行度を示す線維化が強い症例以外にはあまり行われません。ただし、進行した脂肪肝が必ずNASHになる訳ではありません。
脂肪肝の治療は、アルコール性脂肪肝炎なら禁酒が第一です。一方、肥満による非アルコール性(NAFLDまたはNASH)の治療は、運動療法と食事療法による減量が主体となります。肥満でないケースは減量治療ができません。高血圧や糖尿病、高脂血症を合併する場合が多いので、合併症治療薬の中でNAFLDなどにも効果的な薬剤を選択してもらいましょう。
相談された方は体脂肪率32%で、肥満が影響しているようです。そのため、運動療法と食事療法による減量を中心として治療を行いましょう。
ウオーキングや自転車、水泳などの有酸素運動を1日30~60分、週3、4回を目安に行うことを心掛けてください。手軽さではウオーキングがお勧めです。できない時は、1日おきでも構いません。
外出が難しい場合は、踏み台昇降やラジオ体操なども良いと思います。運動する習慣を身に付け、無理なく続けてください。体重が減少しなくても、脂肪肝の改善は期待できます。
食事は取り過ぎによって肝臓に悪影響を与えるものがあります。総カロリーに注意するのはもちろん、炭水化物や甘いジュース、肉類のほか、脂質の多い食事は控え目にしましょう。魚介類や食物繊維を含む食材は、積極的に摂取することを意識してください。
野菜や海草、キノコ、魚を中心に、脂肪分を抑えられる煮炊き調理がお勧めです。昔ながらの和食をイメージすると良いかもしれません。糖尿病治療のための食事指導の書籍を参考にしてはいかがでしょうか。