風疹は全身の発疹、発熱、リンパ節腫大が見られるウイルス感染症です。時に紫斑病や脳炎を起こすことがありますが、比較的軽微な症状で短期間に自然に治癒します。しかし先天性風疹症候群の存在が明らかなになってからは、風疹は予防すべき重要な疾患と考えられています。
現在、風疹は麻疹とともに全例報告が義務づけられています。風疹は発疹の出る他のウイルス性発疹症との区別が難しく、症状だけで風疹と診断するのは難しい疾患です。診断の確定にはウイルスの分離やPCRを使った遺伝子診断が必要です。
過去の風疹罹患や風疹ワクチンの効果を調べるためには風疹抗体を検査する必要があります。臨床的な風疹の診断では確実性に乏しく、また風疹ワクチンも1回のみの接種では抗体価が低下している可能性があります。
最近、都市部で風疹が流行しましたが、その多くは成人の男性です。30~40歳男性は風疹の抗体が最も低い世代です。現在の子どもたちの多くは麻疹・風疹(MR)ワクチンを2回接種していますから風疹に罹ることはほとんどありません。現在、経過措置として中学1年生と高校3年生にはMRワクチンを接種していますから接種した人には抗体ができますが、MRワクチンの接種機会を逃した人は風疹に罹る危険性が残されています。
今回風疹流行の中には海外の仕事中に罹った男性が帰国後に発病し、職場で同僚にうつした症例が報告されています。風疹は職場だけでなく家庭でも伝染する可能性があります。家族の中でも特に配偶者が妊娠初期である場合には先天性風疹症候群の発生の危険性がありますから注意が必要です。
徳島新聞2012年10月24日掲載