徳島県小児科医会 日浦恭一
麻疹が排除されたかどうかを判定するには麻疹の発生数を正確に把握する必要があります。そこで2008年1月から麻疹発生数の全数届出が義務付けられました。麻疹排除の基準は、麻疹の発生数が人口100万人当たり1人を切ることとされます。
2008年以前の麻疹の発生数は定点報告数から全体の発生数を推測しました。これによると2007年の麻疹は2万人以上発生していました。
全数報告となった2008年の麻疹発生数は11,005人、2009年739人、2010年455人、2011年434人と確実に減少していますが日本全体では100万人当たり1人を切るまでには至っていません。2011年には19県でこの基準を達成しています。
麻疹の実数を届出するにあたって、麻疹の診断が従来の臨床診断から検査診断に変更されました。臨床診断だけでは麻疹以外の発熱発疹性疾患の紛れ込みが避けられません。臨床診断がなされて少なくとも2日以内に血液、尿、咽頭ぬぐい液を臨床検査センターに送りウイルス分離、またはPCRによるウィルス遺伝子を検出します。遺伝子型によってその麻疹ウイルスが日本に以前からあったものか外国由来の遺伝子型かが判別されます。
2011年前半に全国で麻疹が流行しましたが、その遺伝子型からは日本で2007-2008年流行時に見られた遺伝子型D5は検出されず、すべてが海外由来のD4、D8、D9、G3でした。
日本国内の麻疹は減少していますが、海外の麻疹は日本に侵入して来ます。麻疹に対する免疫の少ない都市部では麻疹が流行する可能性があります。厳重な監視体制とワクチンの徹底を心がける必要があります。
徳島新聞2012年8月15日掲載