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徳島県小児科医会 日浦恭一

 麻疹はワクチンの普及でその発生数が減少して小児科医でも典型的な麻疹を診察する機会はほとんど無くなりました。しかし世界中で麻疹はまだ完全に撲滅された訳ではありません。WHOは天然痘、ポリオに次いで世界中から麻疹を撲滅する計画を立てています。日本では2012年までに麻疹を排除することを目標に計画が実行されていますが、今年がその目標の最終年です。



 麻疹は発病すれば治療法の無い恐ろしい病気です。高熱の持続、激しい咳や鼻汁、嘔吐や下痢、全身の発疹などに加えて、肺炎や脳炎などの重篤な合併症が見られ、細菌に対する抵抗力が低下しますから細菌の二次感染も多く、生命に関わることもあります。

 さらに麻疹ウィルスは感染力が強く、空気感染するとともに、咳や鼻汁が多く飛沫感染や接触感染もあります。一人でも麻疹が出ると周囲の免疫を持たない人はほぼ100%感染すると考えられます。

 昔の日本では麻疹で命を落とすことも多く、子どもの時に必ずかかる重い病気として恐れられていました。最近では麻疹を見る機会が減少したことから麻疹の本当の怖さを知る人が少なくなりました。

 しかし麻疹は減ったように見えても完全に排除された訳ではありません。昨年も外国から侵入した麻疹の小流行が見られました。日本に麻疹がなくなっても外国の麻疹が侵入して、あっという間に日本で流行します。

 これまで日本は麻疹の輸出国とされてきましたが、最近の日本国内で見られる麻疹はすべて輸入麻疹です。日本から麻疹が排除されても個人に抗体がなければ麻疹にかかります。予防接種は継続することが大切です。

徳島新聞2012年8月8日掲載

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