徳島県小児科医会 日浦恭一
川崎病の診断基準は次の6つです。主要症状として(1)5日以上続く発熱、(2)四肢末端の変化:急性期には手足の硬性浮腫や紅斑、回復期には指先からの膜様落屑、(3)不定形発疹、(4)両側眼球結膜の充血、(5)口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびらん性発赤、(6)急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹です。6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うものを川崎病と診断します。5つの症状がそろわなくても冠動脈に病変があれば川崎病との診断がなされます。
診断基準を満たす典型的な川崎病の他にも診断基準を満たさない不全型の川崎病があります。本症が問題になるのは心臓の冠動脈の病変です。川崎病にも自然治癒するものがありますが、冠動脈病変を見逃すことがあってはなりません。
川崎病の治療については免疫グロブリンとアスピリンを併用することが一般的です。この時、明らかなウィルス感染症やアレルギー疾患、膠原病や悪性腫瘍などが鑑別されれば速やかに治療を開始します。高熱の持続は冠動脈の病変の危険因子です。速やかに解熱して血管炎を消失させ、冠動脈瘤の発生を予防することが川崎病の治療目標です。
免疫グロブリンやアスピリンの投与にも関わらず冠動脈瘤が発生するものが5~8%あります。その中で約4%は心筋梗塞などの虚血性心疾患へ進展すると言われます。急性期に見られた冠動脈の病変が治った後、成人期の動脈硬化の進行とともに心血管系の疾患が生じやすくなることがあります。川崎病にかかった人は成人後も生活習慣病の予防を心がけ、定期的な健診を受けることが大切です。
徳島新聞2012年5月16日掲載