徳島県小児科医会 日浦恭一
2009年に発生した新型インフルエンザは5月に日本に上陸して、夏頃から徐々に増加して10月頃には季節外れの大流行となりました。最近はその騒ぎも落ち着いて季節性インフルエンザとして定着してきました。現在全国的にはこの新型、A香港型、B型の3型のインフルエンザが発生しています。
今年も1月中旬からインフルエンザが増加していますが多くはA香港型と思われます。
インフルエンザにはA型、B型、C型があるとされますが、流行の主役はA型です。A型ウイルスのタイプを決定するのはウイルス表面にあるHAとNAの2種類の突起です。
HAは赤血球凝集素と呼ばれ、動物の咽喉や気管支の細胞表面にある受容体に結合することで動物の体内に侵入します。NAノイラミニダーゼは細胞内で増殖したウイルスが細胞表面から体外に排出される時にウイルスのHAと細胞の受容体を切り離す役割を持っています。抗ウィルス剤はNAを阻害します。
HAにはH1からH16まで16種類、NAにはN1からN9までの9種類があります。HとNの組み合わせによってウイルスの型が決定されます。人のインフルエンザではHAに3種類、NAには2種類あります。過去に流行したスペインかぜやAソ連型、今回の新型はH1N1で香港型はH3N2です。
インフルエンザウイルスは型が同じでも遺伝子は異なりますから発生するインフルエンザの性質も少しずつ異なります。毎年発生するインフルエンザの性質も少しずつ変わり、数十年に一度の大きな遺伝子の変異が発生すると今回のような大流行が発生します。
徳島新聞2012年2月8日掲載