徳島県小児科医会 日浦恭一
人の脳は硬膜、クモ膜、軟膜で包まれています。クモ膜と軟膜の間には髄液が流れていて一定の状態に保たれています。この軟膜やクモ膜、髄液に細菌が入って、感染した状態が細菌性(化膿性)髄膜炎です。
呼吸器や消化器に感染して増殖した細菌が、血管内に入り菌血症となり、血管内から脳血液関門を通過して髄液の中に侵入、細菌が増殖すると髄膜炎となります。
髄膜炎が起こると、その炎症によって増加した髄液中の細胞からさまざまなサイトカインと呼ばれる物質が放出されて、生体に有害な症状が現れます。
細菌性髄膜炎の原因となる菌は年齢によって異なります。新生児や3カ月以内の乳児では、大腸菌やB群溶連菌が原因になることが多く、それ以後の乳幼児ではインフルエンザ菌b型(ヒブ)や肺炎球菌が多くなります。
髄膜炎が起こった時に見られる症状で、特徴的なものは頭蓋内圧亢進症(ずがいないあつこうしんしょう)と呼ばれるものです。亢進は上がるとか高まるとかいった意味です。
脳は頭蓋骨や硬膜で包まれているため、その容量は一定です。髄膜炎のために髄液の量が増えることや、サイトカインの影響で血管の透過性が高まり、脳浮腫が発生すると、頭蓋内の圧力が高くなります。
脳圧が高まると、脳組織が圧迫されて障害を受けることになります。これが頭蓋内圧亢進症状と呼ばれるもので、時に生命が危険な状態に陥る症状となります。
しかし、新生児や乳児の場合、脳圧亢進症状が明確でないこともあり、診断が難しくなることがあります。
徳島新聞2011年4月20日掲載