徳島県小児科医会 日浦恭一
RSウイルス感染症の危険性が高いのが生後4週間以内の新生児です。中でも早産未熟児ではこの危険性が高く、とくに慢性肺疾患や心疾患を持つ子どもでは呼吸障害や無呼吸を発生する危険性が最も高くなります。
また乳児期早期にRSウイルスにかかった子どもがその後ゼーゼー(喘鳴)を繰り返して喘息のような症状を示す場合が多く見られます。とくにアレルギー体質がある子どもがRSウイルスにかかると喘息が発病しやすいと言われます。乳幼児期にゼーゼー言いやすい子どもの中にはRSウイルス感染症をきっかけにしている場合もあるかも知れません。
さらにRSウイルスに対する特異的な治療法はありません。気管支炎、細気管支炎、肺炎に対してはその症状の程度に応じて適切な輸液管理、気道分泌物の除去、去痰剤の使用、加湿された酸素の投与、吸入療法などを対症療法として行います。これでも呼吸状態が悪い場合には人工呼吸の適応になります。
RSウイルスに対してはこれまでも経験的に様々な治療法が行われてきました。しかし未だに有効な治療法は明らかではありません。
ステロイドホルモンの内服や吸入、喘息治療に用いられるロイコトリエン受容体拮抗薬などの有効性も不明です。呼吸障害に対する対症療法を行いながら治癒を待ちます。
RSウイルスに対する明確な治療法はありません。ワクチン開発の動きもありません。新生児や乳児には予防がもっとも大切であると考えられます。
徳島新聞2011年1月26日掲載