徳島県小児科医会 日浦恭一
昨年は新型インフルエンザが大流行する中でその治療と予防接種が重なり、全国の医療機関は大混乱となりました。初めて経験する新型インフルエンザについて様々な情報が乱れ飛び、当初考えられていたような強毒性のインフルエンザでなかったことが幸いして、年を越してやっと終息しました。
しかし新型インフルエンザウィルスの伝染力は大変強く、免疫を持たない子どもたちが次々に感染し発病しました。
さて今回の新型インフルエンザからは多くの新しい知見が得られました。最初にメキシコで発生した当座は死亡率の高い強毒性のインフルエンザと考えられていましたが、日本国内で流行したインフルエンザはそれほどの強い毒性は見られませんでした。
この新型インフルエンザは若年者に多く、多くの老人は免疫を持っていることが分かりました。しかし基礎疾患を持つ人や妊婦、小児は重症化して肺炎などの呼吸器系の合併症を起こすことがありました。さらに伝染力が強く、免疫を持たない若年者層では大流行をひき起こしました。
新型インフルエンザに対して当初、強毒性の鳥インフルエンザを念頭に置いて、厳重な感染防止の隔離策がとられました。ワクチン接種についても接種回数や優先順位、ワクチンの供給などをめぐって大混乱が見られました。しかし結果として日本では外国に比べて死亡率がとても低く、日本の医療が大変優れていることが証明されました。
徳島新聞2010年12月8日掲載