徳島県小児科医会 日浦恭一
成人の百日咳の症状は咳が長引くだけですが、子どもが百日咳にかかると激しい咳込みなどの重い症状が見られます。またその症状は月齢が小さいほど重症になります。新生児や乳児期早期でも百日咳にかかりますから油断はできません。
典型的な百日咳の症状は発作的に激しい咳が連続して起こり、その後に急速な吸気が起こります。「コンコンコン・・・」「ヒュー」というような咳の発作を反復することが特徴です。このような咳の発作は痙咳(けいがい)と呼ばれ様々な刺激で誘発されます。とくに食事中や睡眠中に起こりますから栄養障害や睡眠障害の原因になります。
潜伏期間は7~10日間で、最初の症状は普通のかぜと変わりません。この時期をカタル期と呼びます。カタル期の後から咳が段々ひどくなり、本格的な咳の発作が見られるようになります。この時期は痙咳期と呼ばれ、1カ月近く続きます。その後、次第に咳が減少して回復期に入ります。
百日咳の初期治療には抗菌剤が用いられますが、有効なのはカタル期までです。痙咳期に入ると抗菌剤も咳止めも効果はなくなります。
家族内や保育園などで百日咳患者と接触した場合には抗菌剤の予防的投与を行います。予防接種を受けていても感染しますから予防投与は全員に行います。予防接種を受けていない新生児や乳児期早期の子どもにはとくに注意が必要です。
徳島新聞2010年9月15日掲載