徳島県小児科医会 日浦恭一
成人の百日咳が増加しています。百日咳は元々子どもに多い病気です。成人の百日咳は典型的な症状がなく、長い期間続く咳が特徴で、診断が難しいうえに、成人では咳が長く続くだけでは医療機関を受診しない人も居ますから百日咳の正しい診断がついていないことがあります。このような成人の百日咳患者が免疫のない子どもたちと接触すると子どもたちの間に百日咳が増加します。
百日咳は百日咳菌によって感染する細菌感染症ですが、その特徴的な症状は百日咳菌が産生する数種類の毒素によって発生します。レプリーゼと言われる激しい咳込みが子どもの百日咳の特徴的な症状です。新生児や乳児期早期には無呼吸やけいれんを起こし、脳炎や脳症の発生も問題になります。
これまでの百日咳の流行は免疫のない子どもたちを中心にしたものでした。
百日咳の発生は百日咳ワクチンの普及によって大きく減少し、2005年頃には年間1,500名ほどまで減少していました。しかしその後、徐々に増加して2008年には年間6,500名余りになり、そのうえ成人の割合が年々増加して50%を超えるようになりました。
青年の百日咳が増加しているのはワクチンによって患者が減少し、患者と接触する機会が減り、この世代全体の免疫が低下していることを示します。子どもを産み育てる世代の百日咳は新生児や乳児の百日咳の感染源になりますから特に注意が必要です。
徳島新聞2010年9月8日掲載