徳島県小児科医会 日浦恭一
病原大腸菌による食中毒では重篤な症状が見られることがあります。嘔吐や発熱、腹痛、下痢で発病しますが、下痢の回数が多く激しい腹痛を繰り返し訴えることが特徴です。下痢は水様下痢で便成分が少なくなり、次第に水様の血液が肛門から吹き出し鮮血便になります。血便や腹痛は1~2週間持続して徐々に回復します。
発熱や激しい下痢のために食事が取れず脱水症を起こすことがあります。激しい腹痛を訴えますが痛み止めや下痢止めは腸管の動きを抑制して腸管内に病原菌を長く留めて病原菌の増殖を助けることになりますから使用しません。
下痢を発病して3~7日目に溶血性貧血、血小板減少、腎機能低下による尿量の減少や無尿を認めることがあります。これが溶血性尿毒症症候群と呼ばれる合併症で、ベロ毒素を持つ病原大腸菌感染症では数%に発生します。溶血性尿毒症症候群は腎不全を来して生命を左右することがあります。
乳幼児では病原大腸菌に対する抵抗力が弱く食中毒を起こしやすいのです。夏は気温が高く食中毒の原因菌が増殖しやすい時期です。食品の保存や調理には注意が要ります。
食中毒予防には原因菌を「つけない」、「増やさない」、「殺す」の3原則を守ります。よく手を洗う、作ったものは早く食べる、十分加熱することなどが大切です。
徳島新聞2010年8月25日掲載