徳島県小児科医会 日浦恭一
乳幼児の下痢は多くの原因で発生することが知られています。最も多いのはウィルスや細菌による感染性胃腸炎ですが、その他に感冒や中耳炎、尿路感染症などの時、さらにアレルギーやストレスなど胃腸炎以外の状態でも下痢が見られることがあります。乳幼児の腸管のぜん動運動は様々な理由で亢進しやすく、また消化吸収力が弱いために下痢が起こりやすいのです。
感染性胃腸炎の原因で最も多いのはウィルスです。ロタ、ノロ、アデノ、エンテロウィルスなどが代表的な原因ウィルスです。これらのウィルス感染は上部消化管から始まり次第に小腸に広がり、大腸粘膜まで病変が及ぶことは少ないものです。症状は悪心や嘔吐で始まり次第に下痢になります。
これに対して細菌感染による消化管の異常は大腸粘膜を侵します。その炎症が強いときには粘血便が現れます。
乳幼児は年長児に比べて腸管粘膜局所の免疫が弱いことや病原菌が粘膜に付着しやすいこと、消化酵素による殺菌能が弱いことなどから細菌感染を起こしやすいと言われます。
とくに夏場は食物に付着した細菌が増殖しやすく食中毒の発生が増加します。暑さのために睡眠や栄養状態が影響を受けて、体力が低下しやすくなります。栄養状態や睡眠環境を整えて体力や抵抗力の低下を防ぎ、食中毒の発生に注意したいものです。
徳島新聞2010年8月11日掲載