徳島県小児科医会 日浦恭一
夏かぜの原因ウィルスの中で多いのはアデノウィルスとエンテロウィルスの2つです。エンテロウィルスにはコクサッキー、エコー、エンテロと3つの名前で呼ばれるウィルスが含まれていてヘルパンギーナの他にポリオ、手足口病、ウィルス性発疹症、無菌性髄膜炎などを引き起こします。このウィルスは血清型によって90種類ほどが区別されていて、血清型によって起こる病気が決まります。
エンテロウィルスに感染しても必ずしも典型的な症状が見られるわけではありません。症状のない不顕性感染に終わるものや単なる発熱だけで終わるような場合もあります。このような不顕性感染や発熱のみの患者さんからもウィルスは排泄されますから他の人への感染源になります。
ヘルパンギーナは夏かぜの代表です。潜伏期間は3~5日で、咽頭の発赤や小水泡が出来て咽頭痛と高熱を特徴とします。高熱は2~4日続き、のどの痛みのために水分や食事の摂取が悪くなります。乳幼児では脱水症を起こすことや高熱にともなう熱性けいれんを来すことがありますから注意が必要です。
ヘルパンギーナは一般に軽症で自然に治癒する疾患です。これに直接効果のある薬剤はありません。またアデノウィルスのような迅速診断の検査キットもありません。元気があって食欲も機嫌もよければ無治療で様子を見ることもできる病気です。
徳島新聞2010年7月28日掲載