徳島県小児科医会 日浦恭一
肺炎球菌は健康な子どもの鼻やのどに認められることがあります。そこに存在するだけでは病原性はありませんが、抵抗力や体力が落ちた時やウィルス感染で気道が荒れた時には上気道から下気道に肺炎球菌が侵入して、肺炎や敗血症などを発病することがあります。
肺炎球菌は元気な子どもたちが集団で生活する場所で感染します。社会環境の変化にともない、小さい頃から保育所などで集団生活を送る子どもが増えています。3歳未満では2割、全年齢では3割の子どもたちが保育所などに通っているとされます。感染は保育所に通う兄弟から家庭内でも起こります。
保育所に通い始めて1~2ヶ月するとほとんどの乳児ののどから肺炎球菌やインフルエンザ菌が検出されます。保菌者がすべて重症の細菌感染症を発病するとは限りませんが、中耳炎などを発病する危険性は高くなります。
健康な保菌者が重症感染症になるのを防ぐためには予防接種を受けることが大切です。予防接種で予防できる病気の代表が肺炎球菌感染症です。
世界の多くの国では子どもの肺炎球菌ワクチンを定期接種で行うようになって、肺炎球菌感染症が減少しています。日本では今年2月下旬にやっと国内でワクチンが使用できるようになりました。安心して子どもを集団生活に入れるにはヒブと肺炎球菌のワクチンを接種することが大切です。
徳島新聞2010年4月21日掲載