徳島県小児科医会 日浦恭一
肺炎球菌が重症の感染症になりやすいのは菌体の外側に莢膜という多糖体の膜を持っていて、食細胞の貪食から免れるからです。そのために普通は細菌の存在しない血液中や髄液中で自由に増殖して重症の感染症を起こすのです。
肺炎球菌ワクチンはこの莢膜多糖体に対する抗体を作ることで、肺炎球菌の貪食を促し、体内から排除するものです。
子どもは出生直後に母体からの移行抗体を持っていますが、この抗体は数ヶ月で消失します。生後3ヶ月くらいから2歳くらいまでは免疫学的に未熟で移行抗体も減少する時期で、この時期に肺炎球菌に暴露されると重症の感染症を発症する可能性があります。したがってこの未熟な乳幼児期に肺炎球菌ワクチンで免疫をつけること大切です。
ワクチンは生後2ヶ月を過ぎれば接種できます。ヒブワクチンや3種混合と同時接種が可能です。月齢によって接種回数が変わりますから接種スケジュールについてはかかりつけの小児科医に相談しましょう。
ワクチンを接種している国では肺炎球菌による重症感染症はもちろん肺炎や中耳炎も減少することが明らかにされています。
現在、日本では肺炎球菌ワクチンは任意接種で、費用もかなり高額です。これを定期予防接種にして、誰でも安心してワクチンが受けられるようにしたいものです。
徳島新聞2010年4月28日掲載