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徳島県小児科医会 日浦恭一

 子どもの頭部外傷の大部分は擦過傷や打撲傷で、骨折や頭蓋内損傷などの重症の割合はわずかです。しかし頭部は血管が豊富ですから、表面の傷でも思わぬ大量の出血になることがありますから注意が必要です。

 さらに頭部の皮膚は薄く、外傷を受けた時に頭蓋骨から軟部組織がはがれやすく血腫を作りやすいのです。つまり「たんこぶ」ができやすいのです。

 また子どもの頭蓋骨内側と脳表面をつなぐ静脈は直線的に走行しているために、頭部に強い力が加わるとこの血管が切れやすく外傷性くも膜下出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫などの頭蓋内出血を起こしやすくなります。

 これらの頭蓋内に出来た血腫が脳実質を圧迫し、さらに脳幹部を圧迫すると脳ヘルニアとなり生命に危険性を及ぼします。また脳実質の損傷が起こると周辺の脳組織に脳浮腫をともない、頭蓋内圧の上昇が起こりますから同様の危険性が高くなります。

 頭蓋内圧の上昇時には厳重な全身管理が必要となります。急変することもありますから、緊急の脳外科的な処置が必要となる場合もあります。

 子どもの頭部外傷には多くの問題が発生します。事故予防について十分な安全対策を考えておきたいものです。

徳島新聞2009年10月28日掲載

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