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ひうら小児科 日浦恭一

 今月は子どもに多い鉄欠乏性貧血から鉄欠乏の重要性につてお話ししてきました。貧血の有無に関わらず体内で鉄は重要な働きをしていますから鉄の不足を予防するためにはバランスのとれた食事が大切です。

 新生児から乳児期早期には母体から移行した鉄が十分ありますから体内で鉄不足になることはありません。生後5か月ころには母体から移行した鉄が使い果たされますから、この時期が生理的にもっとも貧血になりやすい時期です。この時期に離乳食が開始されて、必要な鉄が十分補給されれば貧血になることはありません。しかし離乳食の開始が遅れて乳児期後半に母乳だけしか摂れなければ鉄は欠乏します。

 母乳に含まれる鉄は0.04?/dlですが吸収率は40~50%と高く、調製粉乳の鉄は0.78?/dl、フォローアップミルクは1.1?/dlですが吸収率は約10%と母乳よりも低くなっています。いくら沢山飲んでもミルクや母乳だけでは鉄の必要量を賄うことはできません。

 鉄の1日摂取量の目安は6か月以上の乳幼児では6?前後、8~9歳以上で9?前後、10歳以上の男児と月経のない女児では10?、月経のある女児は13?です。

 鉄が多く含まれる動物性食品には豚、牛、鶏の肝臓、卵黄、魚肉などがあり、植物性食品として大豆、木の実、海藻、ほうれん草、小松菜などがあります。

 動物性食品に含まれる鉄はヘム鉄で、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも吸収が良いとされます。またビタミンCやクエン酸を含む果物や野菜を同時に摂ると鉄の吸収が良くなります。この他に造血に大切なビタミンB6、B12、葉酸、亜鉛の摂取も重要です。

 貧血の予防には鉄を含む食品はもちろん、栄養価の高い良質の動物性たん白質を一緒に摂り糖質・脂質・ミネラル・ビタミンをバランスよく摂取することが大切です。

徳島新聞2009年5月27日掲載

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