ひうら小児科 日浦恭一
ノロウィルスはウィルス性胃腸炎の原因として大切なものです。子どもから老人まで感染し、食中毒としても、学校や病院などで集団発生する疾患としても重要なものです。
このウィルスは1968年アメリカ合衆国オハイオ州ノーウォークの小学校で発生した集団胃腸炎の原因ウィルスとして発見されたものです。その形態から小型球形ウィルス、またはノーウォーク様ウィルスと呼ばれたものです。2002年国際ウィルス命名委員会にてノロウィルス属に分類されました。
ノロウィルスは感染力が強くわずかなウィルス粒子で感染すると言われます。
感染様式は患者さんから出た吐物や糞便からの経口感染、食品にウィルスが付着してこれを摂取した人が発病する食中毒、空気中に漂うウィルスを吸い込むことによって発病する空気感染などがあります。
ノロウィルスの潜伏期間は1~2日間です。潜伏期間の後、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状で発病します。ウィルス感染が起こると、まず胃のぜん動運動の低下や麻痺によって胃内容物の停滞から嘔吐が起こります。十二指腸や空腸など上部小腸に感染すると一時的に脂肪や乳糖の吸収が悪くなり、腸管の吸収面積が減少、浸透圧の変化、腸管ぜん動運動の低下や亢進などのために下痢が生じます。
胃腸炎の症状は半日から5日間程度持続します。下痢が治ってもウィルスはしばらく便中に排出されます。
ノロウィルスには特別効果のある薬剤はありません。治療の基本は安静と保温に加えて食事療法です。嘔吐が激しいときには絶食にしますが、嘔吐が軽くなったときに水分や電解質の補給を心がけます。少量のイオン飲料や果汁、野菜スープなどを試み、母乳はそのまま与えますが、ミルクは少し薄めて与えます。脱水症の予防には最近市販されている経口補液も便利です。
ノロウィルスは感染力の強いウィルスですから予防がもっとも大切です。
県民の皆さまへ
ウイルス性胃腸炎(3)
- 詳細
- カテゴリ: 小児科相談
徳島新聞2009年4月22日掲載