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ひうら小児科 日浦恭一

 ロタウィルスは冬に流行するウィルス性胃腸炎の代表的な原因です。ウィルス性胃腸炎の中でも激しい嘔吐と大量の下痢をともなうものですから、乳児がかかると脱水症を起こすことがあります。

 ロタウィルスによる胃腸炎では大便が灰白色で水様、米のとぎ汁様になります。ロタウィルスが発見される前には『乳児白色便性下痢症』とか『乳児仮性コレラ』と呼ばれ、脱水症を起こすことが多い病気として恐れられていました。しかし最近、このような真っ白な便を見ることは少なく重症の脱水症を起こすロタウィルス感染症は少なくなってきているように思われます。

 ロタウィルス感染症は生後6ヶ月から2歳をピークに5歳までに95%の乳幼児がかかると言われます。このウィルスには多くの血清型があり小児期に何度もかかりますが、一度かかると2回目以後はだんだん軽症になります。患児の両親など成人の発病、老人の施設内での流行が見られることもあります。

 潜伏期間は48時間前後と短く、発病後1週間は糞便中に大量のウィルスを排出します。このウィルスは安定したウィルスで汚染された物質から数時間は感染力を保持していると言われます。ウィルスは糞便中だけでなく吐物にも含まれます。

 ロタウィルスによる胃腸炎の合併症でもっとも多いのは脱水症です。普通、嘔吐や発熱は1~2日でおさまりますが、激しい下痢にともなって大量の水分と電解質が失われて、多くは低張性脱水となります。脱水症を予防するためには水分とともに電解質を補給することが大切です。

 ロタウィルスの合併症としてよく知られているのがけいれんです。発熱もなく脱水症もない軽症のウィルス性胃腸炎でもけいれん発作が起こることがあります。通常の熱性けいれん予防に使用されるジアゼパム座薬は無効です。このけいれん発作は長時間持続するタイプと、けいれんが断続的に持続するタイプがあり、治療に苦労することがあります。

徳島新聞2009年4月15日掲載

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