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 RSウィルスは普通、鼻の粘膜など上気道に感染しますが、ウィルスを含んだ分泌物が気管支などの下気道に吸引されると、下気道にも感染して気管支炎や細気管支炎を起こします。とくに新生児や乳児期早期では下気道炎になりやすく注意が必要です。

 下気道炎の中でも重篤なのは細気管支炎です。細気管支炎になると上皮細胞の壊死が起こり、細気管支周囲に炎症細胞が浸潤し、粘膜下組織には著明な浮腫が起こります。さらに上皮組織が剥離し、粘液分泌物が増加するために細気管支の内側、つまり空気の通り道が狭くなります。その結果、気道のもっとも細い部分で閉塞が起こりますから肺胞は虚脱して、肺胞でのガス交換ができなくなります。

 したがって細気管支炎の症状としては、気道の狭窄および閉塞にともなう著しい呼吸障害と、それによる低酸素血症が起こります。呼吸数の増加や努力呼吸、喘鳴やせきの増加に加えてしばしば無呼吸発作が見られることがあります。

 細気管支炎では激しい呼吸障害が起こりますから、元々呼吸機能の未熟な新生児や乳児期早期には酸素不足などによって生命の危険に陥ることがあります。

 また先天性心疾患や慢性肺疾患などの基礎疾患をもつ子どもたちがRSウィルスにかかって細気管支炎になると同じ様に大変重篤な呼吸症状を示して生命の危険に晒されることがあります。

 またRSウィルスは喘息発病の危険因子として知られています。RSウィルスの感染によって気管支炎が発生すると、気道組織の破壊や炎症性サイトカインと言う物質の産生が増加して、幼弱で未発達な気道を強く障害して、喘息を発病します。RSウィルス感染による細気管支炎は長期にわたって肺機能の異常を呈し、喘鳴をくり返します。とくに呼吸機能の弱い素質やアレルギー素因の子どもがRSウィルスにかかると喘息が発病しやすい訳です。

2008年12月17日掲載

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