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県民の皆さまへ

 今回は母乳育児に関するさまざまな障害についてお話します。

 「母乳が足りないかも知れないからミルクを足しなさい」、「保育所に預けるために哺乳びんで飲む練習をしなさい」、「薬を飲むなら母乳を止めなさい」などの指導が行われることがあります。これらの指導は母乳育児の大きな障害になります。

 母乳育児を希望するお母さんにとって「母乳が不足している」とか「母乳を中止しなさい」と言われることは精神的に大きな苦痛を受けることになります。最初に確認しておかなければならないことは赤ちゃんに基礎疾患がないこと、現在の母乳育児が赤ちゃんにとって十分満足するものであることです。

 本当に母乳が足りていれば赤ちゃんは満足しており生き生きし、筋緊張がよく、皮膚色も良好です。尿も便も1日に何回も出ます。1日平均18~30グラムの体重増加が見られます。

 母乳が本当に足りていなければミルクを足す必要があります。

 本当は母乳が足りているのに不足かも知れないと思う母乳不足感と本当の母乳不足を区別することが大切です。

 母乳が足りているのにミルクを足すと、足したミルクの量だけ母乳の分泌量は減少します。また哺乳びんの乳首を吸うことで母乳乳首に対する吸いつきが悪くなります。このことを乳首の混乱と言います。

 最後に母乳育児中の薬剤の服用ですが、世界保健機関(WHO)と国連児童基金(ユニセフ)では授乳を完全に中止すべき薬剤は放射性同位元素と抗腫瘍(しゅよう)剤・代謝拮抗(きっこう)剤のみであるとしています。私たちが授乳中の女性に薬剤を投与する場合には「少しの薬剤が含まれる母乳を飲むことによっておこる不利益」と「母乳を飲めないことによる不利益」をはかりにかけて判断します。実際には母乳中に含まれる薬剤の量はごくわずかですから、母乳を中止することはめったにないわけです。

 母乳育児をすすめるには正しい知識と努力が必要です。したがって母子を取り巻く人たちの協力と支援がなければ母乳育児を続けることはできません。

2007年4月24日掲載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.