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 流行性耳下腺炎は一般におたふくかぜと呼ばれるウイルス疾患で、小児科で取り扱う伝染性疾患の代表です。今月はおたふくかぜについて考えてみました。

 おたふくかぜは伝染力が強く集団の中で一度流行し始めると長く流行が続くことがあります。これは潜伏期間が約2~3週間、平均16~18日と長いためです。また発病前の数日間ウイルスが排出されるので患者さんを厳密に隔離することで病気を予防することが難しいことも流行を長引かせる原因になります。

 おたふくかぜの代表的な症状は耳下腺の腫れと痛みです。最初の数日間は口を開けることも食事をとることにも苦労します。腫れは1週間くらい続きますが、ひどい痛みははじめの2~3日です。熱は出る人も出ない人もあり、症状には個人差があります。  

 おたふくかぜウイルスは唾液やのどの分泌液から接触または飛沫で感染します。感染したウイルスはのどから侵入して上気道粘膜と所属リンパ節で増殖して、その後、白血球に感染し、血液で全身に散布されます。次いでウイルスは髄膜、中枢神経、聴神経から迷路、唾液腺やすい臓、精巣、卵巣、甲状腺、乳腺などの全身の腺組織で増殖します。その後再び血液中にウイルスが出現して発病します。ウイルスが侵入してから発病するまでの期間が潜伏期間です。

 唾液腺の腫れは耳下腺にもっとも多く、4分の3の人が両側の耳下腺が腫れます。顎下(がっか)腺や舌下腺が腫れることもあります。発熱しても高熱になることは少なく、20%の人ではまったく発熱が見られません。

 おたふくかぜのウイルスは唾液から出るばかりでなく、血液、尿、大便、髄液、乳汁からも検出されます。ウイルスは症状が出現する数日前から症状出現後7日間くらい排出されます。

 おたふくかぜにかかってもウイルスに直接効果のある薬剤はありません。治療は痛みに対する対症療法しかありません。したがってとくに予防に心がけることが大切なのです。

2006年6月13日掲載

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