今月は発熱について考えています。
高熱が出ると「ひきつけを起こすのではないか」、「脳に障害を残すのではないか」、「すぐに下げたほうがいいのではないか」とよく聞かれます。
ふつうのかぜによる熱で脳に障害を残すことはありませんから、熱の出方を十分に観察して対応を決めても遅くはありません。しかし発熱に対する取り扱いが医者によって異なるため、患者さんを混乱させていることが多く見受けられます。
熱が出た場合にすぐに冷やしたり解熱剤を使用する必要があるのでしょうか。発熱の初期にはよく寒くてふるえる悪寒を経験することがあります。手足が冷たく汗は出ていません。このような時には、寒さに対してまず手足をくるんで保温します。
出始めの熱を下げる必要はありません。
多くのウイルス感染で見られる発熱は、ウイルスの増殖を抑え、免疫機能を活性化しますから、解熱剤を使用してこれらの働きを抑制することはむしろ有害に作用することがあり、注意が必要です。
解熱することは免疫機能を抑制する恐れがあるのです。
発熱と切り離せないのが解熱剤です。昔は家庭用常備薬の中にアスピリンがあって、発病初期に早めにアスピリンを服用すると、病気が早く治ると信じられていました。しかしアスピリンの使用は急性脳症(ライ症候群)の発生に関与していることが判明しました。現在ではかぜの治療にアスピリンを使うことはほとんどありません。その後インフルエンザ脳症の発生にボルタレンやポンタールという強力な解熱剤が関与していたことが明らかになりました。そのため現在、子どもの発熱に強力な解熱剤は使用されなくなりました。
かぜの熱に解熱剤を使ってもかぜが早く治るわけではありません。ときには有害であることも経験しました。私たち小児科医が、子どものかぜに解熱剤を使用しなくなるまでには長い年月と多くの犠牲を払ってきました。
現在、解熱剤は強い痛みに対して使用するか基礎疾患がありそれ以上の発熱に耐えられない場合などに限定する必要があると考えています。
県民の皆さまへ
発熱・解熱剤の役割
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- カテゴリ: 小児科相談
2006年2月28日掲載